2021 Fiscal Year Annual Research Report
果樹園における天敵カブリダニを用いたハダニ管理に関する分子生態学的研究
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21J14402
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
三川 裕也 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | カブリダニ / ケナガカブリダニ / 生物的防除 / ハダニ / 薬剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成ピレスロイド剤に抵抗性を示すケナガカブリダニ系統を確立するため、秋田県内の慣行防除が行われているリンゴ園で採集された系統と、岩手県内のリンゴ園で採集された3系統を用いて、薬剤による選抜を試みた。秋田の系統については合成ピレスロイド剤に対する感受性の低下が過去に確認されているが、それ以降同剤による選抜は行われていなかった。岩手由来の3系統については、合成ピレスロイド剤に対する感受性レベルは未解明であった。これら4系統の感受性レベルを明らかにするため、まず合成ピレスロイド剤であるシペルメトリンを常用濃度で用いた予備的な薬剤試験を行った。その結果、秋田県由来系統と、岩手県由来の内1系統において、シペルメトリンに対する感受性の低下が認められた。岩手県由来の残り2系統については、高い感受性を示した。続いて、感受性の低下が認められた秋田および岩手1系統に対して常用濃度のシペルメトリンを用いた連続5世代の薬剤選抜を行い、抵抗性系統を確立した。 合成ピレスロイド抵抗性には標的部位であるナトリウムチャネルのアミノ酸変異等が関わっている。標的部位における既知のアミノ酸変異が上記の秋田および岩手1系統の感受性の低下に関わっているかどうかを明らかにするため、当該アミノ酸をコードする遺伝子領域の塩基配列をクローニングによって決定し、4系統間で比較した。その結果、各系統間に塩基配列の違いは認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れている原因として、分譲して頂いたケナガカブリダニの大量増殖が予想以上に難しく、研究遂行に十分量の個体を揃えることができなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
カブリダニの飼育方法を見直し、現在は研究遂行に十分量の個体数が得られつつある。 確立した薬剤抵抗性系統の各種薬剤に対するLC50値を算出する。また、発育や増殖について感受性系統と比較する。 合成ピレスロイド抵抗性には、標的部位であるナトリウムチャネルのアミノ酸変異と、解毒分解酵素活性の増大が関わっている。前者のメカニズムが関わっているかどうかを明らかにするために、薬剤抵抗性および感受性系統を用いたRNAシーケンシングを行い、ナトリウムチャネルの塩基配列を明らかにした上で、感受性の低下に関わるアミノ酸変異の有無について調べる予定である。また、後者のメカニズムが関与している可能性を調べるために、PBO、DEF、DEMなどの解毒分解酵素活性阻害剤を用いた薬剤感受性試験を行う。特定の解毒分解酵素の関与が示唆された場合には、RNA-シーケンシングで得られた結果に基づいて抵抗性系統のみで発現の高まっている当該解毒分解酵素遺伝子を選抜する。
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