2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J14440
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寳田 雅治 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 生物物理 / 細胞内温度 / 蛍光性ポリマー温度センサー / 蛍光寿命イメージング顕微鏡法 / 有糸分裂 / 温度シグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
温度は生体分子の状態や化学反応に影響を与える普遍的な物理量である。本研究では多種の生体分子がダイナミックに化学反応する細胞分裂に着目し、自発的発熱による細胞内温度変動が細胞分裂を駆動するという仮説を元にその証明とメカニズムの解明を目標に研究に取り組んだ。 今年度の検討ではまず、分裂中細胞の温度マッピングに向けた細胞内温度測定の高速化を行なった。従来の研究で確立されていた蛍光性ポリマー型温度センサ(FPT)の蛍光寿命を用いた温度測定では単一細胞内の温度マッピングに1分程度の時間を要していたが、蛍光寿命値計算の最適化及び最新鋭の検出器によるphoton検出効率の向上により、これを1秒以内に取得することが可能となった。この手法を用いて有糸分裂中細胞の温度マッピングを行ったところ、有糸分裂中期において形成される紡錘体においてその極と染色体付近に細胞自発的発熱により生じた高温部分が存在していることを発見した。さらに、細胞分裂中の熱利用反応を阻害するための吸熱ポリマーの開発を行い、過剰量の吸熱ポリマーを導入した細胞では細胞内局所の温度上昇が抑制され、細胞内温度の空間的不均一性が解消されることを発見した。そこで、このポリマーを有糸分裂中の細胞に導入してその過程を観察したところ、中期において分裂の進行が阻害されることが明らかとなった。以上の結果は、細胞内温度の不均一性と有糸分裂が密接に関係することを示唆しており、本研究の仮説を支持する結果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有糸分裂中の細胞において不均一な温度分布が存在すること、さらには温度分布の不均一性を解消させた細胞において有糸分裂が進行しなくなることから有糸分裂が細胞自発的発熱を利用する現象である可能性を強く示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討では、細胞自発的発熱が有糸分裂を駆動するメカニズムを明らかにするため、赤外レーザーを用いた人工加熱により細胞内局所発熱を再現した際の有糸分裂ダイナミクスの観察を詳しく行う。さらに、局所加熱及び吸熱ポリマーの添加時に特徴的な振る舞いをした構造体や分子に着目し熱を利用する分子を探索する。これらの分子を抽出し精製したものをマイクロカロリメトリーにより熱測定することにより、熱利用機序について考察を行うことを目標とする。
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