2021 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場構造からみる賃金・地位達成に関する実証研究-二重労働市場に着目して-
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21J14441
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬戸 健太郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 二重労働市場 / 付加給付 / タスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は二重労働市場仮説に関して、(1)性別と(2)タスク、(3)付加給付の3つに着目してそれぞれ異なる分析を行った。 (1)性別:二重労働市場仮説の実証研究において、女性は結婚や出産を契機に、雇用形態が多くの場合に転換する結果、就労条件に恵まれない第二次労働市場に割り当てられやすい、と論じるのみで女性内部に焦点化した場合の分析は行われていなかった。これは、非正規雇用を一元的なものとみなす、という仮定が存在していることに起因し、非正規雇用に関する先行研究の指摘にのっとって、非正規雇用を(1)パートアルバイト、(2)契約・派遣社員に分離し、女性のみサンプルで分析を行った。結果、契約・派遣社員は、むしろ第一次労働市場に割り当てられる傾向が見られるなど、先行研究とはやや異なる結果が析出された。これは、女性内部において一部の非正規雇用は正規雇用に近接しているという、これまでの結果をマクロレベルでも裏付ける結果である。 (2)タスク:賃金格差の研究において、近年、能力とは別にタスクに着目する必要性が指摘されている。本年の研究では、タスクの決定システムがいかなる変数と関連しているかを実証的に分析した。結果、(1)定型的タスクはこれまで、職業と雇用形態に規定されていると考えられており、企業規模の効果は論争的であったが、企業規模はごく一部の大企業セクターを除いて定型的タスクを必ずしも規定しないが、(2)定型的タスクを投入してもなお、企業規模間格差が存在することが明らかになった。これは、企業規模間賃金格差が仕事に還元できない要素であることを明らかにした。 (3)付加給付:長期休暇に焦点化した分析を行ったが、付加給付において正規雇用は直接的に休暇取得の難易度を下げるが、職場の非正規雇用率との交互作用を考慮すると、明らかに負の効果がみられ、女性で顕著な効果が見られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の調査準備段階において当初予定していた調査の一部が頓挫し、分析計画を見直すことになってしまったが一方で、計量分析については予定程度の進捗であり、一定の分析結果を出すことができたため、総合的には計画どおりと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は最終年となるため、論文投稿に注力する。具体的には、現在、一定の結論が見出された、性別内部における労働市場の二重構造、タスクと企業規模・賃金格差との関係については論文投稿を行い、研究結果の公開を目指す。 また、この分析のプロセスで新たな論点として浮上した点について、現在、二次分析データを入手して分析に着手している。これらの分析結果を今年度に学会報告・論文投稿を行い、博士論文の各章の内容を進展させていく方向である。
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