2021 Fiscal Year Annual Research Report
遮光ゲル担体を用いた微細藻類-硝化菌共存系による新規窒素除去プロセスの開発
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21J14564
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
西 健斗 創価大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 微細藻類 / 硝化菌 / 光阻害緩和 / 遮光 / 窒素除去 / 微生物固定化 / 省エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
曝気を用いない低コストな「微細藻類-硝化菌共存系」を光強度の高い環境下に応用するため、光耐性の弱い硝化菌のみを遮光ゲル担体に固定化し、それを微細藻類-硝化菌共存系に用いた新規窒素除去プロセスの開発を行う。初年度は、①遮光ゲル担体の最適化および、②微細藻類と硝化菌の最適バイオマス比を検討した。これまで使用してきた遮光ゲル担体は黒色遮光材を用いており、遮光性能は高いものの、光熱変換効率も高いことからゲル担体内の温度上昇による硝化菌への影響が懸念されてきた。そこで本研究では、赤、黄、青色の遮光材を準備し、これらを用いた分散液の光照射下での温度変化の測定、および硝化菌と共固定化したゲルでの遮光性能評価を実施した。その結果、黒色遮光材分散の溶液温度は実験前に比べ8.5℃上昇した一方、他の遮光材を用いることで温度上昇の抑制が可能なことが示された。硝化菌を固定化した各色遮光ゲル担体の硝化性能評価では、黄色遮光剤が黒色遮光剤に次ぐ高い硝化性能を示した。以上の結果より、黒色遮光剤の代替として黄色遮光材が適当であると結論付けた。微細藻類と硝化菌の最適バイオマス比の検討では、バイオマス比(微細藻類:硝化菌)は10:0、9:1、7:3、5:5、1:9、0:10の6条件で回分実験を実施した。分散状硝化菌(対照区)および遮光ゲル担体の両条件において、1:9で最も高いアンモニア除去率を示し、それぞれ70%および100%の除去率であった。また、分散状では光阻害の影響によりほとんどの条件で亜硝酸の蓄積が多く確認されたものの、遮光ゲル担体では完全硝化を達成した。したがって、強光下において遮光ゲル担体を微細藻類-硝化菌共存系に用いたとき、1:9(微細藻類:硝化菌)が最適バイオマス比であることが明らかとなった。研究成果は国内外の学会で計4件発表し、論文1報が当該分野で評価の高い査読付き学術雑誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で初年度に予定していた、遮光ゲル担体を用いた微細藻類-硝化菌共存系の連続実験に向けての、①遮光ゲル担体の最適化および、②最適バイオマス比の検討は予定通り実施できた。遮光ゲル担体の遮光材の検討の結果、黄色遮光剤の使用により温度上昇を抑制可能なことが示された。しかし、連続実験に用いるオープンポンド型藻類培養槽では、極端に光強度が高い場合を除いては黒色遮光剤での温度上昇の影響は小さいと判断し、今後の連続実験では遮光性能の高い従来の黒色遮光ゲル担体を採用することとした。また、微細藻類と硝化菌の最適バイオマス比の検討の結果、微細藻類のバイオマス比が非常に小さい1:9(微細藻類:硝化菌)において、最も高いアンモニア除去性能(アンモニア除去率100%)を示した。この比率でも微細藻類により硝化に十分な酸素供給が可能であることが確認された。一方で、微細藻類のバイオマス比が1:9より高い条件での低アンモニア除去率の主要因はpHの上昇であることが明らかとなった。このpHの上昇を抑える観点においてもバイオマス比の調節は有効である。したがって、次年度実施予定の連続実験においても最適バイオマス比を制御することで高い窒素除去性能が期待できる。このように次年度行う予定の長期連続実験に向けた準備がおおよそ終了したことから、今年度の進捗は「おおむね順調に進展」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
遮光ゲル担体を用いてバイオマス比を一定に調節しつつ、微細藻類-硝化菌共存系での屋内環境での連続水処理実験を行う。初年度で検討した、連続実験において遮光ゲル担体に使用する遮光材には、上述の理由により従来の黒色遮光ゲル担体を採用する。回分実験および半連続実験の結果よりバイオマス比を定期的に調節し、太陽光に近い光強度である1000 μmol photons m-2 s-1で連続実験を実施する。事前に定期的なバイオマス比調節が可能であるか確認するため、1Lの三角フラスコを用いて任意のバイオマス比に調節する半連続実験を実施する。また、半連続実験において各バイオマス比の変動が推測できない場合、連続実験では汚泥滞留時間(SRT)による制御ではなく、定期的なバイオマス比制御にシフトチェンジする。連続実験では、有効容積40Lのオープンポンド型藻類培養槽を用いて12:12 時間の明暗周期を設け、水力学的滞留時間(HRT)を10日から4日まで段階的に下げることで負荷速度を上げる。SRT制御またはバイオマス比調節時には、任意の量の微細藻類をネットで遮光ゲル担体と分離し、クロスフロー濾過を用いてバイオマス回収および濾液の返送を行う。微細藻類は吸光度を測定し、固定化された硝化菌は粉砕してqPCR測定を行うことで各々定量する。pH、DO濃度、各バイオマス量の変動、栄養塩濃度、生物叢変化を調査する。連続実験において、定期的なバイオマス回収による濾過が過度なエネルギー消費につながる場合、バイオマス比調節の頻度を変えることで消費電力を削減し、それによる処理性能の比較も行う。得られた結果およびエネルギー消費量をもとに経済性評価を行い、従来法と比較することで本提案プロセスの実用可能性を評価する。
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Research Products
(5 results)