2021 Fiscal Year Annual Research Report
スピロ環状ペプチドの合成を起点とした新規ケミカルスペースの開拓
Project/Area Number |
21J14614
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 亞由太 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 環状ペプチド / 全合成研究 / 異常アミノ酸 / 不斉四置換炭素 / 遠隔位C-H結合官能基化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、強力な抗菌活性を有する二環性スピロ型ランチペプチドが放線菌より単離された。これらのペプチドのスピロ構造は、α-アミノ不斉四置換炭素を含む異常アミノ酸であるavionin構造を中心として形成されている。本研究では、avionin構造の効率的な合成法を開発し、スピロ環状ペプチドを全合成することを目指している。 本年度は、avionin構造の効率的な合成法の開発を検討した。Avionin構造に含まれるα-アミノ不斉四置換炭素はtrishydroxymethylaminomethane(Tris)の3つの等価なヒドロキシメチル基を区別して官能基化することで、効率よく構築する方法を設計した。結果、Tris誘導体に対する1,5-HAT反応を用いた位置選択的なC-H結合官能基化により、α-アミノ不斉四置換炭素を有するavionin前駆体を効率よく合成することに成功した。続いて、avionin構造に含まれる硫黄原子の導入を検討した。合成したavionin前駆体からラクトンを合成し、システインを作用させたところ、ラクトンの開環が起こり、システインが導入されたavionin部分構造を得ることが出来た。また、得られたavionin部分構造からアミノ酸を適宜縮合させることでマクロ環構築の前駆体へと変換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は二環性スピロ型ランチペプチドの中心構造であるavionin構造の効率的な合成法の開発に取り組んだ。Avionin構造のα-アミノ不斉四置換炭素構築において、基質と反応条件を適切に設計することで位置選択的なC-H結合官能基化が立体選択的に進行することを見出した。また、avionin構造に含まれる硫黄原子の導入に関しては困難が予想されたが、様々な検討の結果、ラクトンを経由することで効率よく硫黄原子が導入できることが明らかとなり、avionin部分構造の一つのジアステレオマーを得ることが出来た。さらに、そこからアミノ酸を縮合させて天然物のマクロ環構築の前駆体へと変換した。以上のことから、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
スピロ環状ペプチドの全合成とavionin構造の絶対立体配置の決定に取り組む。天然物に含まれる二つのマクロ環構築においては、収率よく環化体を得るために基質の設計や縮合条件の検討を行う。Avionin構造の一部であるアミノビニルシステイン構造については構造的に不安定であると予想されるため、合成終盤に構築可能な反応条件を探索する。さらに、保護基の着脱を適切に行うことで天然物へと誘導する検討を行う。また、各種ジアステレオマーの合成にも取り組む。その後、合成品と天然物の各種スペクトルデータを比較し、avionin構造の絶対立体配置を決定する予定である。
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