2021 Fiscal Year Annual Research Report
全身性強皮症に出現する多発性骨置換性歯根外部吸収のメカニズム解明研究
Project/Area Number |
21J14643
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
目見田 匠 広島大学, 医系科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 疾患特異的iPS細胞 / 歯根外部吸収 / 全身性強皮症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度実施した研究では、まず健常者由来iPS細胞(RIKEN、Tsukuba、JP)と、対照群として樹立したMERR-SScから疾患特異的iPS細胞(iPS Potal、Kyoto、JP・RIPROCELL、Yokohama、JP)はそれぞれ胚葉体を経て間葉系幹細胞(healthy-MSC, SSc-MSC)へと分化させた。 次にそれらの細胞を用いて①healthy-MSC、SSc-MSCで発現している遺伝子を網羅的に調べるために、無刺激でRNAシークエンスを行い、発現に差があった遺伝子に関してはgene ontologyで解析し関連する遺伝子群を抽出した。②関連する遺伝子は維持培地の状態でリアルタイムPCR法を用いて遺伝子の発現を比較した。③healthy-MSC、SSc-MSCの骨分化能を比較するために、骨分化培地で培養し、アリザリンレッド染色で比較した。結果と考察を以下に示す。
①RNAシークエンスを行った結果、healthy-MSCと比較して、SSc-MSCで発現に変動のあった遺伝子についてgene ontology解析を行った結果、いくつかの関連する遺伝子群が抽出された。②関連する遺伝子の発現をhealthy-MSCとSSc-MSCとで比較したところ、SSc-MSCで骨分化関連遺伝子の発現が顕著に増加していた。③骨分化培地で培養し、アリザリンレッド染色を行ったところ、healthy-MSCと比較して、SSc-MSCではアリザリンレッド陽性のカルシウム沈着を多く認めた。
本年度に行った研究の成果から、SSc-MSCの骨分化能が無刺激の状態でHealthy-MSCと比較して高いこと、さらに、歯の内部に骨様組織が増生していた臨床像から、MERR-SScでは健常者と比較して骨分化能が高いMSCが存在することでMERRを発症している原因となっていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時の研究計画のうち、RNAシークエンスを用いた原因遺伝子の同定、および分化させた骨芽細胞様細胞の細胞機能評価に関してはおおむね当初のスケジュール通りに実施できている。ただし、原因となりうる遺伝子改変マウスの作成には着手できていないため、進捗状況をやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、本年度実施した細胞機能評価をさらに継続して行い、投稿論文化すべくデータを獲得していく。RNAシークエンスの結果同定された原因となりうる遺伝子によりコードされている骨形成関連タンパク質について、当院歯周診療科を受診しているSSc患者の血清を用いてELISAによる血清中の骨関連タンパク質の発現の差を臨床研究(4月現在、倫理委員会に申請中)として行っていく予定である。 当初の予定であったモデルマウスの作成に関して、疾患の原因となる可能性のある遺伝子を過剰発現させた遺伝子改変マウスを作成する予定だが、これまで報告された文献がなく、遺伝子改変マウスモデルが作成できない場合にはin vitroで遺伝子改変iPS細胞を作成し、それを使用してさらなる病態メカニズムの解明を行っていく予定である。
|