2021 Fiscal Year Annual Research Report
The regulation of nitrogen cycle and microbial community in agricultural fields by new method utilizing a microbe-plant interaction
Project/Area Number |
21J14679
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
迫田 翠 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 窒素循環 / 微生物-植物間相互作用 / 土壌微生物 / 畑地 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌細菌Azoarcus sp. KH32C株の作物への接種が畑地の窒素循環および窒素循環を担う土着微生物群集の動態に与える影響を明らかにするため、KH32C株を接種した作物の栽培試験を行った。 KH32C株は水稲の実生の根への定着が確認されていることから、KH32C株を接種する作物として陸稲を選定した。KH32C株を発芽させた陸稲種子に接種し、育苗後、無施肥および堆肥を施用(施肥)した畑地圃場で栽培試験を行った。陸稲栽培期間中に複数回、植物体、土壌、土壌から排出されるガスを採取し、畑地の窒素循環を調査した。陸稲移植後3週間経過後において、施肥の有無に関わらず、KH32C株接種により陸稲の地上部バイオマスが増加し、土壌中のアンモニア態窒素量、硝酸態窒素量および土壌からの一酸化二窒素(N2O)フラックスが減少する傾向にあった。移植後2ヶ月以降は、移植後3週間と比較して、土壌中の硝酸態窒素量が大幅に減少し、アンモニア態窒素量が増加した。移植後2ヶ月以降では、施肥の有無により、KH32C株接種による陸稲の地上部バイオマス、土壌の無機態窒素量、N2Oフラックスへの影響は異なった。陸稲の地上部バイオマスは、栽培期間を通して施肥により増加した。畑地土壌からDNAを抽出し、細菌の16S rRNA遺伝子配列を標的としたアンプリコンシーケンス解析を行った結果、土壌中ではAcidobacteria門およびProteobacteria門が優占しており、Acidobacteria門細菌の相対存在量はイネ栽培の継続とともに漸増していた。多変量解析により、イネ根域土壌と、イネ根の侵入がない土壌では細菌群集構造が異なることが示された。KH32C株接種の有無による細菌群集への影響はイネの生育段階により異なった。 以上より、陸稲を栽培した畑地の窒素循環および土着微生物群集は、陸稲の生育段階およびKH32C株接種により影響を受けることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、KH32C株を接種した作物の畑地圃場栽培試験を行い、KH32C株を接種した作物栽培による窒素循環および土着微生物群集への影響を複数の生育段階で明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
移植後3週間において、KH32C株接種により陸稲バイオマスが増加し、土壌からのN2O排出量が低減したことから、次年度の圃場栽培試験では、移植後1ヶ月以内の窒素循環の分析にとくに注力する。また、KH32C株接種による窒素循環への影響に対し、土着微生物群集がどのように寄与したかを明らかにするため、取得したアンプリコンシーケンス解析結果をさらに詳細に解析するとともに、窒素循環に重要であると推定される土着微生物を畑地土壌から分離し、窒素循環に関わる機能を検証する。
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