2021 Fiscal Year Annual Research Report
人工脂質膜を反応場とした難溶性膜タンパク質完全化学合成法の開発研究
Project/Area Number |
21J14744
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
大川内 健人 徳島大学, 大学院薬科学教育部, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 膜タンパク質 / Native Chemical Ligation / 人工脂質膜 / 脂質ナノディスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人工脂質膜を合成素子とし、最難関合成標的の一つである膜タンパク質の完全化学合成に向けた基盤技術の確立を目的としている。前述の目的を達成するために令和3年度は、脂質ナノディスクによる膜貫通ドメインペプチドの水系溶媒への可溶化、および膜へ導入したペプチドの種々化学変換反応について検討を行った。まず、脂質ナノディスクを調製する上で必要となる膜骨格ペプチド (5A) の大量合成・精製法を確立するとともに、脂質ナノディスク調製法の手技を習得した。また、難溶性の膜貫通ドメインペプチドは脂質ナノディスクへと埋め込むことで水系溶媒に対して分散し、見かけ上の可溶化に成功した。続いてモデル検討として、脂質ナノディスクを用いた1回膜貫通タンパク質の合成に取り組んだ。合成標的であるインフルエンザM2タンパク質の膜貫通ドメインペプチドを脂質ナノディスクに担持させた後、脂質ナノディスク上で細胞外ドメイン及び細胞内ドメインをNative Chemical Ligation(NCL)法により連結することでM2タンパク質の合成を達成した。1回膜貫通タンパク質の合成に成功したため、申請書の合成戦略に示した通り脂質ナノディスク間での膜貫通ペプチドフラグメント同士の連結を試みたが反応は進行しなかった。これは本研究課題における問題点であり今後検討を行っていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質ナノディスクに対する膜貫通ペプチドフラグメントの導入により、水系溶媒への分散による見かけ上の可溶化に成功した。続いて脂質ナノディスクにて可溶化させた膜貫通ペプチドフラグメントに対し、細胞内ドメイン及び細胞外ドメインを順次NCLにより連結することでM2タンパク質の合成に成功している。なお、本タンパク質の合成過程において、脂質ナノディスクとNCL反応において汎用されるチオール触媒を共存させたところ、予期せぬことにpH依存的な脂質ナノディスクの崩壊現象が確認された。今後本現象について精査を行っていく予定である。 1回膜貫通タンパク質の化学合成に成功したことから、続いて複数回膜貫通タンパク質化学合成検討を行った。申請書の合成戦略通り、二種類の脂質ナノディスク担持型膜貫通ペプチドフラグメントのNCL法による連結を試みたが、反応が進行しなかった。そこで、当初問題として考えられた上記の脂質ナノディスク崩壊現象を利用し、複数回膜貫通タンパク質合成に向けた検討を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
複数回膜貫通タンパク質化学合成において脂質ナノディスク間でのNCL反応が進行しなかったことは、本研究課題における大きな問題点である。これは膜貫通ペプチド上のそれぞれの反応点が、嵩高い脂質ナノディスクの影響により十分に近接できないことに起因すると考えた。そこで上記に示した脂質ナノディスクの崩壊現象を利用することで本課題の解決を目指すこととした。戦略として、二種類の脂質ナノディスク導入型ペプチドをNCL触媒存在下酸性条件で脂質―ペプチド複合体とし、膜貫通ペプチドフラグメント成分を十分に混合する。続いて液性を中性条件とし脂質ナノディスク上にてNCL反応が進行するか確認する。
|