2021 Fiscal Year Annual Research Report
アンジオクラインファクターによる間葉上皮転換機構の解明と応用
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21J14797
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
犬飼 公一 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | Apelin-APJと癌転移能 |
Outline of Annual Research Achievements |
Apelin-APJ系のEMT 抑制、MET 誘導効果の癌の抗転移作用を評価するため、Apelin 過剰発現癌細胞およびCrisper-Cas9でAPJをノックアウトした癌細胞株を作成した。このApelin 過剰発現癌細胞およびAPJ-KO癌細胞の性質を評価すると、EMT関連の転写因子の中でApelin 過剰発現癌細胞では上皮系のマーカーの発現上昇を認め、反対にAPJ-KO癌細胞においては間葉系マーカーとされる転写因子群の発現上昇を認めた。このことよりvitroレベルにおけるEMTとApelin-APJシグナルの関与が示唆された。またvivoの実験系として2種類の転移モデルを確立した。ひとつは癌細胞をマウスの尾静脈に注射し、肺転移を評価する転移モデルであり、このモデルでは、野生型の癌細胞と比べてApelin 過剰発現癌細胞では肺転移数が増加し、APJノックアウト癌細胞は肺転移数が減少した。これらの現象は2種類の癌細胞で共通して認められた。このことより、癌細胞のApelin-APJと転移能が関連していることが示唆された。また原発巣を模した皮下移植癌組織による転移モデルにおいては、両者のサイズは同等であり腫瘍形成能の差は認められなかった。また野生型の癌細胞をApelinノックアウトマウスと野生型マウスの尾静脈に注射したところ、両者の肺転移数に明らかな差は認められなかった。 EMTおよびMETは転移の各段階で抑制的あるいは促進的に働くため、転移の評価においては時間要素を加味した複合的な視点での解析が必要であると思われる。今後転移の各ステージにおけるApelin-APJ系のEMTおよびMETへの影響を詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにCriper-Cas9を用いて、2種類以上のAPJ ノックダウン癌細胞の作成に成功した。さらにWT マウスにGFP 発現Apelin 過剰発現癌細胞やAPJ ノックダウン癌細胞を移植した場合の浸潤転移の評価を2種類以上の癌細胞で評価することができた。その結果Apelin-APJ系がEMT/MET現象を介して転移メカニズムを調整していることが示唆された。これらのvivo実験系においては順調に推移していると考えている。現在、上記のような細胞の振る舞いを直接的に証明する実験手法として、細胞の上皮系および間葉系の状態を可視化できるEMT/METレポータープラスミドを癌細胞に組み込み、vitroあるいはvivoの実験系を確立しようと試みている。これらについては当初より比較的長期の実験計画が見込まれるため、現時点での進歩状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
癌細胞のApelin-APJ系が転移に関係していることは示唆されたため、その詳細なメカニズムをEMT/MET以外の面からも解析を行う。今年度癌細胞のApelin-APJの作用について、EMT/MET以外にも腫瘍血管新生に深く関与している可能性が認められたため、上皮間葉転換という現象だけでなく上皮・血管内皮-間葉転換機構まで含めた形質転換機構の解析を通してアンギオクラインファクターと癌悪性化の関連を包括的に検討していく。
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