2021 Fiscal Year Annual Research Report
エクソソーム変容に着目した運動によるアルツハイマー病予防効果の分子機序解明
Project/Area Number |
21J14874
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 明子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 運動 / エクソソーム / 分子シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の疫学研究から、運動はアルツハイマー病の発症リスクを低下させることが報告されているものの、その詳細な分子機序は不明なままである。一方、運動は細胞外小胞の1種であるエクソソームの量や内包タンパク質の変化を引き起こすことが知られている。そこで本研究では、運動によるアルツハイマー病予防効果の分子機序の解明を目指し、末梢-中枢連関の視点から血中エクソソームに着目した検討を行う。 まず、血中エクソソームに対する運動の影響を明らかにするため、トレッドミル運動負荷後の野生型マウスから精製した血中エクソソーム画分について、ナノ粒子解析システムおよびプロテオームを用いて粒子量・粒子径・内包タンパク質の解析を行った。その結果、運動は血中エクソソームの粒子量を増加させ、さらには分子シャペロンの1つであるHSC70の含有量を増加させていることが分かった。HSC70を含む熱ショックタンパク質HSPは、ストレス応答時に異常なタンパク質凝集を抑制する分子シャペロンとして知られている。ウェスタンブロット法を用いて詳細な解析を進めたところ、運動は血中エクソソームを介していくつかのHSPタンパク質分泌を亢進していることが示された。 次に、運動によるアルツハイマー病予防効果におけるエクソソームの寄与を明らかにするため、アルツハイマー病モデルマウスへエクソソーム阻害薬を投与し、運動後の脳内における病理変化について評価する。ナノ粒子解析システムおよびウェスタンブロット法を用いたエクソソーム解析の予備検討から、野生型マウスに対するエクソソーム阻害薬の有効な投与条件を見出した。次年度はここで見出したエクソソーム阻害薬の投与条件を用い、運動によるアルツハイマー病予防効果におけるエクソソームの役割について明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新型コロナウイルスCOVID-19の感染拡大による研究室の閉鎖や、研究室および動物実験施設の移設作業により、研究活動の中断を余儀なくされた。よって、当初予定していたアルツハイマー病モデルマウスの作製および解析が著しく遅れたものの、年度前半の目標であった血中エクソソームに対する運動の影響については野生型マウスを用いて検討を行い、運動が血中エクソソームを介して分子シャペロンHSPの分泌を亢進することを見出した。また、今後の研究目標を達成するために必要となる、マウスに対するエクソソーム阻害薬の投与条件についても確立できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、運動によるアルツハイマー病予防効果におけるエクソソームの寄与を明らかにするため、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、(1)運動後の血中エクソソームの変化、(2)運動による病理改善効果に対するエクソソーム分泌阻害の影響の2点について検討を行う。さらに、今年度の野生型マウスの解析で得られた知見を含め、運動がアルツハイマー病を予防する詳細な分子メカニズムを明らかにすることによって、アルツハイマー病の新たな治療標的となる候補分子の提案を目指す。
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