2021 Fiscal Year Annual Research Report
超高深度アイソフォミクス手法の構築および時空間プロテインアトラスの作成
Project/Area Number |
21J15131
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 紘士 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
mRNAの選択的スプライシングや翻訳開始点の違い、翻訳後のプロセシング等により、単一の遺伝子から多様なタンパク質が産生される。それらの機能を特徴づけることは生物学的に重要であるが、タンパク質の発現は、転写時だけでなく転写後・翻訳時にも制御されているため、トランスクリプトミクスだけでは正確に予測できない。したがってプロテオミクスにおけるアイソフォームレベルのタンパク質の同定が求められている。そこでアイソフォームを識別可能な特異的な特徴を持つペプチド配列の、効率的な新規同定手法の開発を目的とした。末端配列が変化しているアイソフォームを効率良く検出するために、N末端に比べ非常に煩雑な操作を必要としたタンパク質C末端ペプチド濃縮プロセスにおいて、配位子交換クロマトグラフィーを用いた簡便かつ高感度な新規手法を開発し、国際誌での報告も完了した。また、SDS-PAGEを用いたタンパク質の分子量に基づいた分画によるアイソフォームの検出では、in silicoで予測したよりも分離の性能が低く、アイソフォームの網羅的な同定には不十分であることを明らかにした。また、翻訳開始点が変化しているアイソフォームに加え、近年報告が増加している、本来タンパク質をコードしていない領域であると考えていた5’UTRやnon-coding RNAなどから翻訳されているノンカノニカルなタンパク質にも着目した。そのようなタンパク質を同定するために、タンパク質N末端ペプチドを用いて同定するワークフローの開発を行った。その結果、本研究室で開発したタンパク質N末端濃縮法によって取得したデータセットと、カスタマイズしたデータベースを用いることにより、98種の新規翻訳開始点に由来するタンパク質の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
配位子交換クロマトグラフィーを用いた簡便かつ高感度な新規タンパク質C末端ペプチド濃縮法の開発を行い、国際誌での報告も完了した。単一の遺伝子に由来するアイソフォーム間ではそのタンパク質配列が変化するため、分子量も変化する。そこでSDS-PAGEを用いてタンパク質の分子量に基づいた分画によるアイソフォームの検出を検討したが、in silicoで予測したよりも性能が低く、アイソフォームの網羅的な同定には不十分であることが分かった。また、未報告または通常とは異なる翻訳開始点に由来するタンパク質を同定するために、リファレンスゲノム配列から作成したカスタマイズデータベースとタンパク質N末端ペプチド濃縮法を組み合わせたワークフローを開発した。本研究室で開発したタンパク質N末端ペプチド濃縮法を用いて取得したデータセットに対し、データベース検索を行うことで、98種の新規翻訳開始点に由来するタンパク質の同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は異なるタンパク質N末端濃縮法およびタンパク質C末端濃縮法を組み合わせ、大規模タンパク質末端データセットを取得する。さらに、タンパク質末端データセットに最適なデータベースを構築する。構築したデータベースを用いて、タンパク質末端データセットについて検索を行うことで、アイソフォームだけでなく、現在までに報告されていないノンカノニカルなタンパク質の大規模な同定を行う予定である。
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