2021 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙機燃焼室壁の熱拡散特性時間を考慮したパルス冷却によるヒートソークバックの抑制
Project/Area Number |
21J15164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐古 憲孝 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | フィルム冷却 / 高温壁面冷却 / パルス噴射冷却 / 核沸騰 / 逆問題解析 / 液滴飛散 / 高速度拡大撮影 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,宇宙機に搭載する二液式スラスタにおけるフィルム冷却を対象に,高温壁面に対して冷却液を単発噴射およびパルス噴射した際の非定常な冷却特性を予測できる液膜形成モデルの構築,ならびに冷却流量に対する冷却性能を最大化する噴射制御方法の確立を目的としている. 本年度は液噴流径,噴射速度および噴射流量をパラメータとした単発噴射冷却試験を実施し,高温壁面冷却過程における液膜挙動ならびに液膜/壁面間の伝熱特性に影響を及ぼす物理因子を検討した.その結果,高温壁面上で観察される液膜飛散現象ならびに飛散位置の進行速度に対しては,液噴流径および噴射速度によらず噴射流量が影響することを明らかにした.また,温度計測結果から冷却面の温度分布ならびに熱流束分布を推定する3次元非定常熱伝導逆問題解析手法を構築・適用することで,噴射流量の増大に伴い液膜飛散位置近傍の核沸騰領域における熱流束が増大することを示した. また,上述の試験において液膜に生じる核沸騰起因の気泡成長・破裂により液膜から多数の液滴が飛散していく微粒化現象を見出した.この現象について詳細な検討を行うために,バックライト法を用いた高速度拡大撮影を実施した.これにより,数百μmオーダーの気泡が破裂し,数十μmオーダーの液滴に微粒化する様子をとらえるとともに,発生する液滴径分布を取得することに成功している.さらに得られた計測結果をもとに,温度境界層厚さおよび液膜厚さに着目し,核沸騰起因の飛散液滴径を予測する理論モデルを構築することにも成功した. 以上により単発噴射条件における液膜挙動および冷却過程の現象理解に一定の目途を得たため,ヒートソークバックを伴うパルス噴射冷却試験に着手し始めている.本年度は,パルス噴射回数を3回に規定し噴射時間を固定して,噴射停止期間および熱源温度を変更した試験を実施し,液膜飛散位置の進展に及ぼす影響を評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,高温壁面に対する単発噴射冷却試験を実施し,液膜挙動および液膜/壁面間の伝熱特性に影響を及ぼす物理因子を明らかにした.この成果は現在,伝熱関連の学術誌に投稿し,掲載予定である. さらに,壁面冷却現象に関連して,高温壁面上に液噴流が衝突した際の液膜に生じる核沸騰に起因した液滴飛散現象を見出し,高速度可視化計測を通して現象のモデル化に成功した.この成果については,国内および国際会議にて発表を行った. また,当初は2022年度に予定していたパルス噴射冷却試験にも着手でき,得られた成果について国内会議で発表を行った
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Strategy for Future Research Activity |
パルス回数を規定し,総噴射量一定条件下でデューティー比および噴射流量を制御項目とした試験を実施し,より少ない総噴射量で効果的に壁面冷却できる条件を見出す.これに対し,ヒートソークバックによる壁面温度回復の特性時間(熱拡散特性時間)がパルス噴射冷却に及ぼす影響を理解すべく,壁面側の材質を変更する試験を行う.以上により,ヒートソークバックを緩和し,尚且つ少ない冷却剤噴射量でより良い冷却性能を達成する,熱拡散特性時間を考慮した噴射制御方法の提案を目指す.
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