2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J15218
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
笹嶋 雄也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | クライオ電子顕微鏡法 / 細胞骨格 / ヌクレオシダーゼ / スピロプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
スピロプラズマはリボンと呼ばれる独自の細胞骨格を持つ。このリボンはフィブリルという、細菌ヌクレオシダーゼから進化したスピロプラズマ特異的な細胞骨格タンパク質から構成される。私たちはこれまでにS. eriocheirisから単離したフィブリルフィラメントの単粒子クライオ電子顕微鏡法により、フィブリルの新規原子構造を決定した。本研究では、新たに電子線クライオトモグラフィを用いてリボンを可視化し、その成り立ちをフィブリル原子構造をもとに議論する。 氷の中に閉じ込めたスピロプラズマ細胞の傾斜撮影像からトモグラムを再構成したところ、細胞らせんを裏打ちするリボンを可視化することに成功した。次にリボンを構成するプロトフィラメントの詳細な三次元構造を可視化するために、リボンを3本のプロトフィラメントを含む大きさの四角い箱で区切って、箱の中の密度を平均化するサブトモグラム平均を行った。得られた三次元構造は、連なったリング状密度をシリンダー状密度が架橋するような繊維構造をしており、リングを重ねるように3本のプロトフィラメントが並んでいた。これらの特徴は、フィブリルフィラメントを作るサブユニット間の、N末端ドメイン同士が相互作用するシリンダー部分、C末端ドメイン同士が相互作用するリング部分にそれぞれよく対応していた。また、リング表裏の分子表面は電荷が偏り、表側は正電荷を、裏側は負電荷を帯びていた。このことから、複数本のフィブリルフィラメントは、正電荷を帯びた側面が、負電荷を帯びた片側の側面に引き寄せられて、互いに電荷を打ち消すように繊維の向きを揃えて配向し、リボンを形成する可能性が考えられる。 これらの成果は、バクテリア細胞骨格の新規構造および進化的起源の一例を示し、関係する研究分野において新たな知見を与え、その研究分野の発展に寄与する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果をまとめた1編の原著論文をプレプリントリポジトリであるbiorxivに発表し、学会誌へ投稿した。そこで、2度の投稿により得た査読結果をもとに追加実験および論文内容の論理展開を再考し、本研究を完成させるべく取り組んだ。また、本研究により得られた知見を含む、スピロプラズマ遊泳運動の進化的起源についての1編の英文総説をFrontiers in microbiologyにて発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度にプレプリントリポジトリであるbiorxivに発表した1編の原著論文について、該当年度中に学会誌に投稿したときに得た査読結果をもとに、論文内容の完成度を上げ、適当な学会誌に発表する。また現在進行中の研究内容を新たに1篇の原著論文としてまとめ、学会誌にて発表し研究を完成する。
|
Research Products
(6 results)