2021 Fiscal Year Annual Research Report
高精度土地被覆分類図作成システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
21J15348
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
石井 順恵 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | グレード付きラフ集合 / 地上検証データ / 土地被覆分類 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は高精度な土地被覆分類システムを開発することである。そのために3つの達成目標を設けており、そのうち次の2つについて取り組んだ。 1つ目は、これまでの研究で開発してきた土地被覆分類器GRS(Grade-added Rough Sets)の改良である。ラフ集合理論では関係、下近似、上近似などの概念が定義されているが、GRSでは明確な定義がなされていなかったため、これらの概念の定義を行い、その上で新しいアルゴリズムの開発を行った。GRSにおける関係、下近似、上近似などの定式化を行ったことで、より合理的な分類が可能となった。この成果は、2022年度に論文として発表する予定である。 2つ目は、検証データの質の評価である。検証データの質は、空間代表性と時間代表性の2つの側面から評価した。特に広域の土地被覆図の検証データは作成が難しく、質も保証されていないことが多い。本研究では、地上検証データと中解像度衛星画像を組み合わせて、一定の空間解像度で空間代表性を保証した検証データセットを半自動的に生成する手法を確立した。また、空間代表性を保証した検証データと保証する前の検証データで複数の全球土地被覆図の精度評価を行ったところ精度差が生じ、検証データの質の保証の重要性が示された。この成果については、7月に国際誌Remote Sensingにて発表した。また、時間代表性についても地上検証データを用いた評価を行ったが、約10年間となる2時期で変化のないデータは600点未満であることが明らかになり、その地点は時間代表性が高い検証データとして使用できる可能性があることが明らかになった一方で、土地被覆変化を評価できる地点は15点で全球の土地被覆変化を評価するには統計的に不十分であることが明らかになった。この成果については、11月に国際会議ACRS2021にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分類器GRSの基礎理論となっているラフ集合理論は、同値関係に基づいた基本集合を用いて下近似、上近似の2つの近似を行う理論である。本研究では、まずGRS上での関係、下近似、上近似の厳密な定義を行った。さらに、土地被覆分類における曖昧なクラスの分類精度を高めるために、下近似だけでなく上近似を利用するアルゴリズムを検討した。この理論の構築やアルゴリズムの開発の効果を確認するために、2次元のシンプルな特徴空間における分類や衛星画像の土地被覆分類を行った。この研究は計画当初、関係、下近似、上近似が古典的ラフ集合の概念をほぼ変更することなく適用可能であると考えていたが、実際にはかなり異なる定義が必要であったため、予定より多くの時間を要した。しかし、厳密な定義を行ったことにより、既存のGRSの問題点が顕在化し、その解決方法の見込みが立ったため、結果としてより高度な分類器の開発が見込まれる。 土地被覆図検証データの質の保証については、空間代表性と時間代表性の2つの側面から評価した。空間代表性の保証については、地上検証データの存在する全球の整数緯度経度の地点を中心とした一定の空間的領域が均一であるか不均一であるかを複数の衛星画像の平均値及び分散を使って自動的に判定できるような手法を確立した。また、この手法を用いて作成した全球土地被覆図の検証データと従来の全球土地被覆図検証データを使って複数の全球土地被覆図の精度評価を行い、それらの違いを考察した。時間代表性の保証については、地上検証データを用いて土地被覆分類図の精度評価を行うことを想定して、その検証データのクラスが時間の経過により変化しづらく安定しているものと、反対に変化を検証するために用いることができるものが現状どのくらい存在するかを評価した。 システム化に向けた準備は、上記の研究に時間を取った影響で遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
改良したGRS分類器に関する成果は現在、国際誌で発表するためにまとめているところであり、2022年度の第1四半期中には投稿予定である。 また、2022年度はこれまでの検証データの質の保証や改良したGRSによる分類なども組み合わせて、新たな土地被覆分類システムを構築することを中心に進める。システム化は予定当初より遅れてはいるが、研究を進める中で想定外のことが起こる可能性もあることから予めゆとりを持った計画を立てているため、2021年度の遅れに伴う大きな計画の変更は考えていない。ただし、当初システム化の対象とする地域を全球や大陸などの広域としていたが、それよりは狭い範囲とする代わり複数の対象領域の土地被覆図でシステムの検証を行うこととする。ただ、構築しようとしている土地被覆分類システムに対象領域の制約はなく、単に検証する領域が変わるだけであり、その影響でシステムの設計が変わるということでなはない。 システムの構築では、第1四半期に既存の地図から教師データを自動生成する手法を確立する。教師データの自動生成手法として、既存の地図をベースとした複数の教師データを用いて、確度の高い教師データを生成する手法を検討する。第2四半期には教師データのベースとなる地図の年と異なる衛星画像の土地被覆分類に対する教師データの自動生成の汎用性の確認を行う。第2四半期と第3四半期は、さらに教師データの自動生成によって作成された教師データや予め用意した検証データについて、2021年度に確立した手法を用いて空間代表性の保証を行うこと及び、改良したGRSでの土地被覆分類を含む土地被覆分類のシステム化を行う。また、この成果は2023年度に学会発表または論文によって公表する予定であり、そのための取りまとめを第4四半期に行う予定である。
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Research Products
(2 results)