2021 Fiscal Year Annual Research Report
イオン性物質の細胞膜透過理論の確立と高効率細胞導入への応用
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21J15365
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
大松 照政 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 脂質二分子膜 / 電気分析化学 / 膜透過機構 / ボルタンメトリー / イオン透過 / イオン分配 / 対イオン / 共存イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,カチオンとアニオンの脂質二分子膜への分配に注目した,脂質二分子膜を介したイオン性分子の膜透過理論を構築し,その理論をリン脂質小胞へのイオン性物質の導入に応用することを目的としている. ① 電気化学的手法と蛍光測定を融合した新規膜透過測定法の開発 従来の電気化学測定では,カチオンの膜透過とアニオンの逆方向の膜透過を区別することができず,膜透過イオンの同定が困難であった.これに対し,本研究で開発した膜透過電流-膜透過蛍光同時測定法では,膜電位に応じた膜透過電流と同時に,膜透過直後のイオン性蛍光分子の蛍光強度を測定するため,他イオンの膜透過と区別してイオン性蛍光分子のみの膜透過速度を精確に評価できる.同測定法により,蛍光性カチオン分子そのものの膜透過速度が共存アニオンの疎水性や濃度に依存すること,イオン性分子の膜透過速度が脂質二分子膜内のカチオンとアニオンの濃度に対して比例関係にあることを実験的に明らかにした. ② 脂質二分子膜におけるイオン性分子の膜透過理論の構築との実験的証明 膜透過理論を,イオン性分子の膜透過速度が脂質二分子膜内のカチオンとアニオンの濃度に対して比例関係にあるという実験事実を基礎にして構築した.本研究により得られた理論式を用いると,これまで説明できなかったイオン性分子の膜透過速度に対する膜電位依存性,濃度依存性,共存イオンの影響を矛盾なく再現できることを明らかにした.構築した理論は,膜内の拡散係数以外すべて実測値を使用しているにもかかわらず,種々の実験条件における膜透過速度を再現できることから,理論で仮定したイオン対分配モデルは妥当であるといえる.目的イオンのみが膜内に分配すると考える従来の膜透過理論を覆す新しい膜透過理論を提案することになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のイオンが存在する場合の BLM 内へのイオンの分配量を実験的に測定し,膜透過電流-膜透過蛍光同時測定法を用いたイオン性物質の膜透過を測定することで,膜電位,共存イオンの影響,膜透過速度を関係づけた膜透過理論を構築することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築した膜透過理論に基づいて,リン脂質小胞を用いたイオンの膜透過解析とイオン性蛍光物質の自己濃縮を実証する予定である.構築した膜透過理論に基づいて,リン脂質小胞を用いてイオンの膜透過動態を確認する.また,イオン性薬物の効率的な新脂質小胞への封入や細胞導入への応用を目指し,共存するイオンの種類や濃度勾配を調整することで膜電位を調節し,イオン性蛍光物質のリン脂質小胞への自己濃縮を実現する.
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Research Products
(6 results)