2021 Fiscal Year Annual Research Report
Relationship between the carnivores ecology and human activities in a rainforest of southeastern Cameroon
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21J15430
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南 倉輔 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 保全生物学 / 食肉目 / カメラトラップ / 熱帯雨林 / アフリカ / カメルーン / 個体数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カメルーン共和国南東部の熱帯雨林地域において、自然生態学的手法と民族生態学的手法を用いた調査を行うことで、観測の困難な食肉類の生態と地域住民の生活との関係をより詳細に理解することである。今年度は以下のことに取り組んだ。 コロナ禍以前に収集したカメラトラップのデータを解析し、小型食肉目の個体数と共変量との関係を統計モデルによって推定した。 その結果、個体数(カメラ前を生息地に含んでいる個体の合計)は、ハナナガマングース31(CI:24-42)、サーバルジェネット26(CI:21-35)、アフリカンパームシベット23(CI:19-31)、クロアシマングース22(CI:17-29)の順で多かった。AICモデル選択をしたところ、最も広く生息し、個体数が多いクロアシマングースでは、村からの距離が含まれたモデルが最適モデルとして選ばれ、村から遠いほど個体数が増加する傾向があった。サーバルジェネットでは道幅、村からの距離、傾斜、水場の有無を共変量として含むモデルが最適モデルとして選ばれた。これは、サーバルジェネットが開けた道を歩き、村から近い傾斜のある環境を好むという傾向を示している。アフリカンパームシベットとハナナガマングースの最適モデルにはどの変数も含まれなかった。アフリカンパームシベットは、主に果実食者であり、他地域の研究では果実を求めて畑に集まることが報告されているが、本地域の畑は限定的な範囲に限られるため、村からの距離に応じた個体数の変化がなかったのかもしれない。最も個体数が少ないと推定されたクロアシマングースは、住民の狩猟記録において、この4種の中では最も多く狩猟されている種であるため、人間による狩猟が個体数に影響している可能性がある。以上の内容で論文を執筆し、投稿の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は採用1年目であったが、新型コロナウイルスによる渡航規制で、フィールドワークを行うことができなかったため、予定していた調査のデータが収集できなかった。そのため、コロナパンデミック以前に行ったカメラトラップ調査のデータを使用して、動物の動画や画像の解析を進めた。占有モデルや、Royle-Nicholsモデルといった統計モデルを用いて解析を行ったことで、カメラによる間接的な情報から直接観察の困難な動物種の生態を推定し、考察を深めることができた。その成果として、来年度へ向けて投稿論文の執筆を進めている。 しかし、当初から予定していた民族生態学的調査に関しては進行が滞ってしまい、本研究の重要な要素である、地域住民の持つ生態学的知識の保全生物学への貢献可能性に関する検証は未だできる見込みはたてられていない。コロナウイルスが落ち着き、いつ渡航が可能になってもいいよう、先行研究をあたり、聞き取り調査時の質問項目と、聞き取り結果の分析方法について理解を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスが落ち着き、渡航が解禁され次第、現地へと赴きフィールドワークを実施する。今後は、民族生態学的調査を行うことで、地域住民の食肉目に関する生態学的知識を収集する。半構造化インタビューにより、対象動物の目撃場所、季節、環境情報とともに、各動物種の習性や行動などといった生態的な情報も詳細に聞き取りを行う。そうすることである程度正確な情報としてまとめ、カメラのデータと同等に扱うことができるように工夫する。そうして集めた住民のデータから、食肉類の分布を改めて推定する。また、それと並行して地域住民からの知識を活用したカメラトラップ調査を行うことで、従来の方法との検出率などの違いを比較するとともに、地域住民の目撃情報をもとに推定した結果とも比較してその有効性を検証する。 それに加え、コロナ前から行っていたフン分析も継続的に行い、餌資源の重複について調べる。
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