2021 Fiscal Year Annual Research Report
「グローバル人材」のライフコースに関する教育社会学的研究
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21J15459
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 知彩 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | グローバル人材 / 海外留学 / 日本人大学生 / 留学動機 / 出身階層 / 地位達成 / 自己実現 / 文化的再生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は本研究の中核をなすインタビュー調査を重点的に行った。具体的には、本研究が調査対象とする「トビタテ!留学JAPAN」プログラムを通じて6-12ヶ月程度の海外留学を行った学生を「グローバル人材」と位置づけ、ライフコースにおける留学の意味を、「留学動機の形成・実現過程・留学後の職業達成」に注目して調査した。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を鑑み、インタビューは対面またはZoomを用いたオンラインで実施した。スノーボウルサンプリングにより研究協力者を募り、延べ38名の研究協力者に調査を実施することができた。また、インタビュー調査で得られた結果のうち、とくに留学動機と出身階層・地位達成との関連を分析した論考を、日本教育社会学会の機関誌『教育社会学研究』に投稿し、掲載が決定した。現在は、インタビュー調査の協力者を募ると同時に、これまで得られたインタビューデータの分析を、①「グローバル人材」は自己や集団をどのように定義・認識しているのか、②「グローバル人材」は留学の職業的意義をどのように語るのか(語らないのか)という2点に注目して分析をすすめている。 また、これまでインタビューと並行してきた社会調査の二次分析のうち、論文として結実していなかった留学の機会格差・意欲格差に関する分析を精緻化し論文投稿を行った。これらはそれぞれ、日本国際教育学会の機関誌『国際教育』と異文化間教育学会の機関誌『異文化間教育』に論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍という状況にもかかわらず、本研究の中核をなすインタビュー調査を、延べ38名に実施することができた。また、これらの調査結果を、日本教育社会学会の機関誌『教育社会学研究』への投稿論文として、迅速に結実させることができた。 さらに、インタビュー調査と並行して、これまでの研究成果のうち、十分に研究成果を報告できていなかった分析を、再分析したうえで、日本国際教育学会の機関誌『国際教育』と異文化間教育学会の機関誌『異文化間教育』に論文として結実させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、①インタビュー調査の継続、②2021年度に実施したインタビュー調査により得られたデータの再分析と論文投稿、③社会調査の二次分析、④博士論文の執筆を行う。まず①について、2021年度は38名の研究協力者にインタビュー調査を実施し、数多くの貴重なデータを入手することができた。ただし、海外留学が多様化していることを踏まえ、今年度も引き続きインタビューを実施する。②について、インタビューを進めるなかで、研究協力者が自身と他者との主観的な境界を設定していることに気づいた。そこで彼らの実践を「バウンダリー・ワーク」という視点から記述し、想像の共同体としての「グローバル人材」とそのリアリティを分析した論考を8月に日本教育学会の機関誌'Educational Studies in Japan'に投稿する。③について、インタビュー調査/分析と並行して社会調査の二次分析を行っている。とくに多重対応分析という手法を用いて、高校生の海外留学志向を出身階層との関連から分析している。同分析を精緻化したものを5月に日本教育社会学会の機関誌『教育社会学研究』に投稿する。④について、これまで行ってきた調査/分析を総合し、海外留学をめぐる階層格差や地位達成における不平等を多角的に分析/考察したものを、博士論文として結実させる。9月に提出し、2023年3月の博士学位授与を予定している。
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