2021 Fiscal Year Annual Research Report
点欠陥制御による非輻射再結合中心の抑制と低抵抗p型AlGaNの実現
Project/Area Number |
21J15559
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤池 良太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 半極性 / AlGaN / 有機金属気相成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
深紫外LEDは従来の深紫外光源である水銀ランプ等を置き換えることが期待されている。また、波長220-230 nm帯の深紫外線は殺ウイルス作用があるが人体には無害であることが近年知られてきた。一方、AlGaN系深紫外LEDの効率は短波長になるにつれ低下し、波長230 nmでは外部量子効率は1%にも達していない。そこで本研究では、これら波長域での高効率な深紫外LEDを作製することを目的としている。まずは有機金属気相成長法にてc面AlN/sapphire上にAlGaN/AlN量子井戸を作製した。フォトルミネッセンス(PL)測定での評価では、発光ピーク波長が250 nmから220 nmと短波長になるにつれて、室温における井戸幅で規格化したピーク強度が~1/100にまで低下するという結果が得られており、波長~225 nm程度では低温・室温でのPLピーク強度比から内部量子効率が1%程度だと見積もられた。一方、同条件で成長したAlNには、[O]が10^18 cm^-3台と、意図しない不純物が高濃度で混入していることが分かった。これらの量子井戸は、将来高効率化が期待される半極性r面での成長へ展開することを見据えて、上流側にて高圧(~200 Torr)で成長した。これは、r面AlGaNは現状高圧成長を行うことが必要だが、原料のTMAが高圧だと気相中でNH3と反応し、現在の成長装置の通常の成長位置だと基板まで原料が到達しないからである。上流側はウェハトレイ外周部との距離が近く、ウェハトレイ外周部の堆積物から不純物が混入している可能性がある。高効率化にはこれら点欠陥の抑制が重要と考える。そこで、通常の成長位置において低圧(~38 Torr)でのr面AlN成長を試みており、成長条件の最適化により上流側高圧成長時と同程度の表面モフォロジーを持つr面AlNの作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高効率発光する量子井戸層の作製条件の検討を主に行う予定であり、c面AlN/Sapphireテンプレート上にてAlGaN/AlN量子井戸を作製した。最適成長条件でも短波長になるにつれ発光強度が低下し、波長~225 nmでは内部量子効率は1%程度と見積もられた。AlGaN系量子井戸では短波長化のため井戸層をAlリッチにする必要がある。Alリッチ化に伴って真性点欠陥が原理的に増加することも知られており、その影響だと考えていたが、r面上への成長を見据えた結晶成長装置炉内の位置での成長のため不純物が想定以上に混入していたことが判明した。一方、不純物の問題の解決のため、当初は予定していなかったが通常の成長位置かつ低圧の成長条件でのr面AlNの成長も行い、上流側位置での高圧成長条件下と同程度の表面モフォロジーを有するr面AlNの成長に成功した。高圧下だと気相中における原料消費が激しいが、低圧下での成長が可能となれば無駄となる原料が大幅に低減されるため、産業応用的にも重要な知見を得たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは低圧下での平坦なr面AlGaNの成長を目指す。上流位置での高圧下成長条件においては既に平坦なr面AlGaNが作製できており、r面AlNとの成長条件の違いについても知見を得ている。また、既に低圧下通常成長位置でも、高圧下上流位置での成長と同程度の表面平坦性を有するr面AlNは作製できている。したがって、低圧下通常成長位置でも平坦なr面AlGaNの作製が可能と考えている。これにより、不純物密度が低いr面AlGaN系量子井戸の作製が可能となり、非輻射再結合確率が低減され、かつ半極性r面の利用による輻射再結合確率の増加も見込める。また、低抵抗p型AlGaNの実現に向けたドーピング環境の構築も完了したため、p型AlGaN層作製条件の検討も進めていく。これらにより、高効率なAlGaN系深紫外LEDの作製を目指す。
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