2021 Fiscal Year Annual Research Report
画像処理を利用した鋼部材の塗膜除去を不要とした亀裂探傷法に関する研究
Project/Area Number |
21J15567
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡部 慎也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / き裂探傷 / 疲労き裂 / 鋼構造物 / 赤外線サーモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
疲労き裂は,脆性的な破壊を引き起こし橋梁の安全性に重大な影響を及ぼす可能性があるため,早期の発見および補修が重要となる.そのため,供用中の橋梁がどの程度の疲労き裂を有し,疲労き裂がどの程度,構造的な安全性に影響するのかといった健全性評価を効率的に実施可能な手法の開発および導入は喫緊の課題である.一方で,既存のき裂探傷手法は,効率的な手法とは言えず,土木構造物の老朽化が進み,また,少子高齢化が進む我が国において,効率的に疲労き裂を遠隔検出,あるいはモニタリングする手法の開発が必要とされている. 本研究では,構造部材に発生したき裂により,熱伝導の阻害が生じることに着目し,赤外線サーモグラフィを利用し,構造部材に対し能動的な熱負荷を行い,その温度分布を計測することにより,き裂探傷を行うものである. 一年目である令和3年度には,赤外線サーモグラフィ画像について,画像微分処理など,画像処理をおこなうことにより,き裂の抽出が可能となることを実験により検証し,ガセットやソールプレートなど,土木鋼構造物にみられる,様々な構造形式への適用の検討をおこなった. また,実験結果をもとに有限要素解析による再現解析を実施し,数値解析モデルの検証を行った. 数値解析では,二次元的な赤外線サーモグラフィ画像より,き裂深さといった三次元的な形状把握が可能であることが確認され,遠隔の計測対象に,レーザー光により遠隔的に熱を負荷し,赤外線サーモグラフィを用いて温度ギャップを計測することで,近接しなくとも,き裂深さ,き裂長さ等のき裂形状の同定が可能となることを示した.これらの成果は,国際会議(IABMAS,SEMC)において発表済である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度前半は有限要素法を用いた熱伝導解析を中心とした検討を行い,熱伝達の不連続性から生じた温度ギャップを利用した亀裂形状特定手法の実現可能性を提示することができた.また,実験により得られた赤外線サーモグラフィ画像を画像微分処理することによるき裂形状の抽出も可能であることが確認された.しかしながら,より精度よく疲労き裂や欠陥を抽出する手法として着目したオイラービデオ拡大法の必要機材の一部については,新型コロナウイルス感染症拡大,半導体の市場供給不足の影響による入手難が生じたため,本手法の検証については,機材の入手次第,着手することとした. 2021年度後半は,提案を行ったデジタル画像相関法を用いたき裂探知手法に関して,有限要素解析による検証を行った.基本的には鋼部材を対象としているが,鋼部材だけでなく,ゴム材などへの適用を目指した. 2022年度においても,オイラービデオ拡大法検証のための実験機材の入手が困難であったことから,本手法の検証については,解析的検討に留まることとなった. 一方で,ゴム支承といった,本手法のゴム材料への適用について,解析的検討により,検証を行った. これまでの研究成果については2つの国際会議において,発表予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,赤外線サーモグラフィならびに,オイラービデオ拡大法を用いた疲労き裂の検出手法の開発を目標としていたが,「現在までの進捗状況」において述べたように,本年においても,必要機材の購入に難航しているため,これまでの研究において得られた結果について,対象となる材料を限定しない,一般化を図ることとする. 具体的には,ゴム材料等への適用である.近年,橋梁に多く利用されている免震用積層ゴム支承は,オゾン劣化や赤外線の影響によりき裂の発生が見られ,き裂が進展することによる安全性の低下が課題となっている.そこで,本き裂検出手法を,ゴム材料への適用を目標に,実験ならびに数値解析により検証を行う. なお,当初の対象とした鋼構造の疲労き裂の検出手法についても,引き続き,数値解析を用いることにより,研究を進めていくものとする. これらの結果について,次年度中に,国内誌への論文投稿を予定している.
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