2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒスチジンのリン酸化を介した三量体Gタンパク質による神経軸索再生の制御機構
Project/Area Number |
21J15589
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
酒井 芳樹 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヒスチジンリン酸化 / 線虫 / 神経軸索再生 / 三量体Gタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物において、セリン、スレオニン、チロシンのリン酸化だけでなく、ヒスチジンのリン酸化も存在することが分かっているが、その生理的意義は分かっていない。申請者は線虫C. elegansをモデル動物とした遺伝学的解析により、(1) ヒスチジンリン酸化酵素NDK-1が、3量体Gタンパク質βサブユニットGPB-1のヒスチジンをリン酸化することで、損傷した神経の再生を阻害すること、 (2) ヒスチジン脱リン酸化酵素PHIP-1が、NDK-1によってリン酸化されたGPB-1のヒスチジンを脱リン酸化することで、GPB-1による神経再生阻害を防ぐこと、の2点を見出していた。今年度はまず、NDK-1によるGPB-1のヒスチジンリン酸化サイトの同定を試みた。その結果、GPB-1の動物種間で保存された266番目のヒスチジンが、NDK-1によるリン酸化サイトであることを遺伝学的に明らかにし、さらにこのヒスチジンはPHIP-1による脱リン酸化サイトであることも明らかにした。加えて、さらなる遺伝学的解析により、GPB-1の266番目のヒスチジンのリン酸化が、神経再生阻害因子である三量体Gタンパク質αサブユニットGOA-1の活性化を介して、神経再生を阻害することも見出した。これにより、ヒスチジンのリン酸化による神経軸索再生制御機構の理解が大きく前進した。また、PHIP-1の活性制御機構を明らかにする目的で、PHIP-1と結合する因子を酵母2ハイブリッド法により網羅的に探索した。その結果、オートファジー開始キナーゼであるULKのホモログUNC-51を分離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった、NDK-1およびPHIP-1のヒスチジンリン酸化・脱リン酸化の標的を同定することができ、ヒスチジンリン酸化による神経軸索再生制御のメカニズム解明に向けて大きく前進したため。
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Strategy for Future Research Activity |
PHIP-1結合タンパク質として分離したオートファジー開始キナーゼULKホモログのUNC-51が、PHIP-1の活性制御に関与するか解析を進める。具体的には、UNC-51はPHIP-1をリン酸化するか、もしそうならばリン酸化サイトはどこか、そのリン酸化はPHIP-1の機能に重要か、検討する。
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