2021 Fiscal Year Annual Research Report
リンイリドによるスピロシクロプロパンの開裂続く環化反応の開発とアズレン類の合成
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21J15601
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大貫 悠太 富山大学, 医学薬学教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | スピロシクロプロパン / 1-アザアズレン / リンイリド / 炭素環形成反応 / ジヒドロインダノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スピロシクロプロパンを用いる複素環、炭素環形成反応の開発と、それを利用した有用化合物の合成に取り組んでいる。本年度は、以下の研究成果を得た。 (1) アミンによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応を用いたアザアズレンの合成 所属研究室で以前報告しているアミンによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応の、7員環スピロシクロプロパンへの適用を試みた。2’-フェニルシクロへプタン-1,3-ジオン-2-スピロシクロプロパンとベンジルアミンをアセトニトリル中で加熱すると、目的の開裂―環化反応が進行し、ヘキサヒドロシクロヘプタピロール-4-オンを収率87%で得た。しかしながら、その後のベンジル基の除去が困難であったため、他の除去容易な置換基をもつアミンを検討した。その結果、2,4-ジメトキシベンジルアミンを用いたところ、スピロシクロプロパンの開裂―環化反応が良好に進行しヘキサヒドロシクロヘプタピロール-4-オンを収率94%で得ることができ、さらに、5員環の酸化反応、酸性条件での2,4-ジメトキシベンジル基の除去を達成し、ピロール体を二段階収率71%で得ることができた。最後に、7員環の酸化とアザアズレン環への変換によって目的の2-フェニル-1-アザアズレンを4段階収率12%で合成することに成功した。 (2) リンイリドによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応の開発 6員環スピロシクロプロパンとリンイリドとの反応を試みた。2’-フェニルシクロヘキサン-1,3-ジオン-2-スピロシクロプロパンに、エトキシカルボニル基が置換したリンイリドを作用させると、ジクロロメタン中で加熱しても反応の進行は見られなかった。一方で、アセトニトリル中でより加熱することで炭素5員環形成反応が進行し、1,2-トランスジヒドロインダノンが選択的に得られることを見出し、反応条件を最適化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、リンイリドによるスピロシクロプロパンの開裂続く環化反応を見出し、反応条件の最適化まで達成した。また、アミンによる7員環スピロシクロプロパンの開裂続く環化反応を利用した1-アザアズレンの合成を達成した。1-アザアズレンの合成研究を通じて得た、7員環スピロシクロプロパンの反応性に関する知見は、リンイリドを用いる反応の開発にも応用できると考えており、研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の1-アザアズレン合成法は高価で入手困難なトロポノイドを原料に用いる手法が一般的であったが、今年度に開発した合成法は入手容易なシクロへプタン-1,3-ジオンを出発物質として用いており、トロポノイドを用いない新たな合成法としての利用が期待できる。そのため、今後は開発した合成法を利用して様々な1-アザアズレン類縁体の合成を試みる。また、今年度に新たに見出したリンイリドによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応について、基質一般性の検討、反応機構の解析、得られたジヒドロインダノンのインダンへの酸化を試みる。さらに、リンイリドとの反応を7員環スピロシクロプロパンに適用し、アズレンの合成を試みる。
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Research Products
(4 results)