2021 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患SENDAの病態解明とオートファジーを標的とした新規治療開発
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21J15642
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
月田 貴和子 自治医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / SENDA /BPAN / WDR45 / 鉄代謝 / WIPI4 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳内鉄沈着を伴う神経変性疾患SENDA /BPANの病態解明と治療開発を目指したものである。原因遺伝子のWDR45はオートファジーの初期段階に関与することが分かっているが、鉄代謝におけるWDR45の役割は全く不明である。そのため、SENDA /BPANにおける鉄代謝異常は、オートファジーの異常に関連しているのか、それとも別の機序で起きているのかも不明である。 本年度は、患者と健常者の線維芽細胞を用いて、オートファジー活性を定量したほか、鉄イオンや鉄代謝に関わる分子の発現を幅広く評価した。オートファジー活性の測定には、オートファジーで分解される物質であるLC3を指標とした。LC3のタンパク量をウエスタンブロットで定量した他、蛍光プローブ(GFP-LC3-RFP)を用いて、LC3が結合したGFPが分解される効率を、RFPを内部標準として評価した。いずれの手法でも患者細胞のオートファジー活性は健常者の半分程度に低下していた。 鉄は二価鉄と三価鉄として細胞内に存在する。二価鉄は高い還元能を持ち、ATP合成や神経伝達物質などの産生に利用される。しかし、過剰な二価鉄はフェントン反応を介して活性酸素種を産生し細胞傷害性につながるため、安定な三価鉄に酸化されフェリチンに貯蔵される。細胞内への鉄イオンの取り込みにはトランスフェリンレセプターとDMT1が、細胞外への排出にはフェロポルチンが関与している。細胞内の二価鉄の需要が高まった際は、フェリチンがオートファジー経路で分解されて、内部の三価鉄を二価鉄に還元して細胞質に放出される。本年度の研究では、二価鉄、三価鉄に加え、鉄の流出入やフェリチンの分解に関与する分子の発現を評価した。患者細胞では、フェリチンが蓄積しており、鉄の流出入に関連する分子や鉄イオンのバランスも崩れていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内鉄沈着を伴う神経変性症の一つであるSENDA/BPANの原因遺伝子WDR45は、オートファジーの初期段階に関与することは分かっていた。しかし、他のオートファジー関連遺伝子の異常では脳内に鉄が沈着する病態は起こらず、WDR45遺伝子異常と鉄代謝傷害の関連は不明であった。本年度の研究によって、WDR45遺伝子が鉄代謝のどの部位に関与するのか、そして患者細胞で鉄代謝異常が起こる機序を改名した(投稿中)。病態理解においては想定以上の前進があった。この内容について特許申請した。一方、当初予定していた薬剤スクリーニングに関しては令和4年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
SENDA /BPANの表現型を改善させる薬剤の探索を進めるとともに、患者において中枢神経特異的に病態が形成される機序について研究を深める。 薬剤探索については、まず上述の蛍光プローブ(GFP-LC3-RFP)を遺伝子導入した線維芽細胞を用いてスクリーニングを行う。薬剤はFDA承認済みの中枢神経移行性のある薬剤ライブラリーを使用する。GFP/RFP比が改善した薬剤は、さらに鉄代謝に関する表現型も改善するか追加で実験を行う。 中枢神経特異的に傷害される機序については、患者線維芽細胞から分化誘導した神経細胞を用いて実験する。神経細胞の細胞体、軸索、神経終末の形態的な変化や、電気的活動の変化があるかどうか調査する。また、得られた表現型の違いが遺伝子導入や薬剤添加で改善するか確認する。
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