2021 Fiscal Year Annual Research Report
炭素置換アルミニウムアニオンを応用した新規化合物の合成と反応性についての研究
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21J15731
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
車田 怜史 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | アルミニウム / ホウ素 / ルイス酸 / アルマボラン |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素置換基を有するアニオン性アルミニウム1価化学種であるアルマニルアニオンを用いた新規典型元素化合物の合成および性質の解明に取り組んだ。具体的にはアルマニルアニオンの求核性を利用しアルミニウム(Al)-ホウ素(B)結合含有化合物(AlB)の合成をし、その特異な反応性および物性を調査した。ここで、アルミニウムとホウ素は一般的にともにルイス酸であり、今回合成したAlBは2つのルイス酸中心を持つことになる。そこで、ルイス塩基に対してAlBがどのように振る舞うかを調査したところ、ルイス塩基の電子的特性に応じて作用するルイス酸中心が変化することを明らかにした。また、アルミニウムとホウ素のルイス酸性は非充填の3pおよび2p軌道由来であるが、AlBではそれらが隣接することで軌道の重なり合いが起こり、ルイス酸性が向上することを計算化学から明らかにし、それが起源となる光学特性の発現も見出した。この研究成果はJournal of the American Chemical Society誌に掲載されている。 また、炭素置換アルマニルアニオンの合成へのメカノケミストリーの応用を検討した。その結果、炭素置換Alアニオンを効率的に合成することが可能となった。本検討は北海道大学・ICReDDの伊藤肇教授および久保田浩二准教授との共同研究として行った。また、効率的な合成が可能となったアルマニルアニオンの物性調査も行った。具体的には、名古屋大学理学研究科の唯美津木教授および邨次智准教授のご協力の元、XPSスペクトルを用いてアルマニルアニオンがアルミニウムの低酸化数化学種であることを実験的に評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案していたアルマニルアニオンの反応性については、おおよそ調査を終えている。しかし、現在までに想定していた反応性の発現は確認されていない。目標達成にはいくつかの問題点(溶解性、安定性等)を抱えているため、検討の余地がまだある状況である。 新規炭素置換アルマニル配位子の合成および遷移金属との錯形成においては、検討の結果、錯形成の段階でAl-C結合の反応性の高さが原因となり望む反応が進行しないことが分かった。それを元にした新規の配位子を設計し検討を行っているところである。 新規アルミミニウム含有化合物の合成については研究実績の概要に示したように検討を終え論文投稿に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
アルマニルアニオンの反応性については、添加剤を加えることで問題点が改善されることが分かっているので、適切な反応条件の探索、および生成物の各種分光法を用いた同定を行う予定である。 新規炭素置換アルマニル配位子の合成および遷移金属との錯形成については、現在合成に取り組んでいる新規配位子の合成を完了させた後に反応性の調査を行う予定である。
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