2021 Fiscal Year Annual Research Report
水素原子移動触媒の分子設計にもとづく末端C-H選択的官能基化反応
Project/Area Number |
21J15746
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 隆平 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 水素原子移動 / 有機分子触媒 / 有機光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、HATに対して活性なC-H結合を有する化合物を基質とした末端C(sp3)-H選択的官能基化反応の開拓を目的に、その実現に資する新規HAT触媒の開発を試みた。具体的には、N-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートのリン原子上により嵩高い置換基をもつ触媒を合成した。クメンを基質として反応を行った際に、A(末端C―H結合が官能基化された生成物):B(内部C―H結合が官能基化された生成物)= 2:1の生成比でアルキル化体が得られることを確認している。今回合成した種々のN-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートを用いて上記の反応に適用したところ、リン原子上置換基のかさ高さによる選択性の向上は見られなく、電子供与基や電子求引基が結合したホスフィニル基を有する触媒を用いても選択性と電子密度の相関は得られなかった。この際、置換基を導入すると反応性が低下することが明らかになったため、反応性の向上を目指す上での新たな指針が必要であると考え、N-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートがN-カルボニルトリアゾリウムアミデートよりも高い触媒活性を有する要因の探索を行った。反応基質や触媒の当量を変化させて速度論的解析をおこなったところ、水素原子移動過程が律速段階であることが伺えた。この結果から、N-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートを用いた場合の水素引き抜き段階の遷移状態エネルギーがより低い、もしくは、生成物阻害による触媒活性の低下を受けにくい可能性を見出した。この結果は、触媒活性の向上を目指す上での重要な指針となり、今後の触媒開発に大きく貢献すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大でA(末端C―H結合が官能基化された生成物):B(内部C―H結合が官能基化された生成物)= 2:1の生成比でアルキル化体が得られているが、位置選択的C(sp3)-H官能基化反応としては選択性の観点で課題が残る。一方で、不明瞭であった高い触媒活性の起源の解明に資する実験結果が得られている。上述の通り、この結果は、触媒活性の向上を目指す上での重要な指針となり、今後の触媒開発に大きく貢献すると考えている。以上、位置選択性の向上という観点では課題が残されているものの、選択性の向上を目指す上での障壁となる反応性の向上に重要な実験結果が得られていることを鑑み、計画全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
N-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートのリン原子上にかさ高い置換基をもつ触媒の合成を引き続き行い、位置選択的C(sp3)-H官能基化反応の開発行う。また、N-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートを用いた水素原子移動反応の基質適用範囲を確認する。天然物などの複雑構造を有する化合物を基質としてHATの特徴を活かした多様なC-H変換反応の開発も行う。さらには、触媒合成と機能評価を通して、位置選択的HATを実現する触媒分子設計のひとつの指導原理を確立する。さらに、反応機構解析を行い、詳細な反応機構を推定するとともに、高い触媒活性の起源を明らかにする。
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