2021 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠後期の母体プロラクチンによる次世代の養育行動発現の調節機構の解析
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21J15858
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西連寺 拓 群馬大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 胎盤性ラクトゲン / プロラクチン / 胎盤 / プロテオーム解析 / 妊娠後期 / マウス / PRL3B1 / PRL |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスなどのげっ歯類において、下垂体由来のプロラクチン(PRL)と胎盤由来のプロラクチンファミリーに属する胎盤性ラクトゲン群は生殖生理に深く関連していることが知られている。我々は妊娠中の母親の下垂体由来のプロラクチンが胎仔の養育行動の発達にも関わっていることを報告し(Sairenji et al. 2017)、引き続きそのメカニズムの解析を行った。これまでの成果はCIN85(Cbl-interacting protein of 85kDa)蛋白質の遺伝子をノックアウトしたマウス(CIN85 KO)がネグレクト様の行動を示すことで得られた。CIN85 KOを用いた実験を計画していたが、継代されたマウスで同様の行動表現型が観察されないことが判明した。このためCIN85 KOの使用しない研究計画へ移行した。我々は妊娠中の野生型マウス(WT)のプロラクチン分泌をブロモクリプチンにより抑制する実験を行い、次世代のマウスにおいて養育行動に異常は観察されないことを確認した。ここまでの成果を論文報告した。妊娠中のWTに介入することで、次世代の養育行動が有意に障害されるモデルは確立されなかったが、その可能性について今後検討を行うこととする。 行動実験の結果を受けて、妊娠末期のWTにおいて高濃度に分泌される胎盤性ラクトゲン(mPL-II; Prl3b1)の発現量の測定を行った。その結果、ELISA法では妊娠日齢19日(G19)の母体血で有意な低下が認められた。妊娠末期のマウスのmPL-IIの分泌量の変化に着目した先行研究は少ないが、マウスの生殖生理と関連が深いと考えられる。mPL-IIの発現量の変化と胎盤機能の関連を解明するため、胎盤組織を用いたプロテーム解析を行った。胎盤由来のプロラクチンの経時的な発現量の測定、およびその機能や調節に関わる分子の検索を行った。結果の解析を今後行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究の基盤となっていた遺伝子改変マウスが継代を重ねることで行動表現型の再現性が確認できなくなったこと。遺伝子経変マウスによる実験は中止することを判断した。 一部新しく研究計画を立案することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠末期に大量に分泌されるPRLやPRLと同等以上に分泌される胎盤由来の胎盤性ラクトゲンII(mPL-II; prl3b1)は、子宮環境の安定に深く関わっていると考えられ、間接的に胎仔の脳発達に影響するという仮説の検証を引き続き行う。 mPL-II分泌量の経時的変化を追った詳細な先行研究は少なく、その機能についても不明な部分が多い。2021年度では妊娠後期のmPL-IIの母体血中濃度測定を行い、妊娠日齢19(G19)以降での急速な減少がみられるとする実験結果を得た。この結果を基に、mPL-IIの分泌量が急減する前後で胎盤機能にどのような変化があるかを調べる。このためには、まず3つのタイムポイントで胎盤組織片を回収し、プロテオーム解析を行う。 プロテーム解析で得られた結果より、mPL-IIの増減に関与するタンパク質の検索を行う。またmPL-IIの変化に伴う胎盤機能の変化についての解析を行う。mPL-IIの機能や調節機構についてはまだ未解明の部分が大きく、この結果をもって論文投稿および学会発表を行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)