2021 Fiscal Year Annual Research Report
糖利用順位から迫る細菌間クロスフィーディング機構の解明と腸内マイクロビオータ形成
Project/Area Number |
21J15883
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 紘翠 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / ビフィズス菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト腸管内には40兆個にも及ぶ多種多様な細菌が生息し、腸内細菌は様々な疾患に関与するが、「どのようにして腸内細菌叢が形成されるのか」は未だ解明されていない。これまでの研究から、腸内細菌叢形成には細菌間のクロスフィーディングが大きな影響を与えていると考えられている。特に、ヒト常在性ビフィズス菌Bifidobacterium bifidumは、腸管内に豊富に存在するムチン糖鎖を単糖・二糖に分解して、一部の糖を他菌にクロスフィードすることが報告されているが、その分子機構は不明な部分が多い。そこで本研究では、本クロスフィーディング機構への理解を深めるために、B. bifidumにおいてこれまで不明であったコア構造と呼ばれるムチン型糖鎖構造の分解様式を明らかにすることを目指した。本年度は、β-N-acetylglucosaminidase活性が報告されているGH84ドメインを持つ2つの細胞外酵素(B. bifidum JCM 1254由来の未同定酵素BbhIVおよびBbhV)について、精製酵素や遺伝子欠損株を用いて機能解析を実施した。また、本解析の対照として、既報の細胞外β-N-acetylglucosaminidaseであるBbhI(GH20)を採用した。解析の結果、BbhIとBbhIVは、core 3構造とcore 2構造にそれぞれ作用することでGlcNAcを遊離し、B. bifidumのムチン糖鎖利用において異なる特異性を発揮しつつ協調的な役割を果たすことが示された。加えて、ムチンを糖源としてGlcNAc取り込み能を有するBifidobacterium breveとB. bifidumの共培養を行ったところ、B. bifidum のbbhI・bhIV二重欠損株との共培養時にB. breveの生育遅延が観察され、GlcNAcの遊離は菌叢形成に大きな影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビフィズス菌B. bifidumのムチン型糖鎖分解を担う新規酵素BbhIVを同定することができた。特に、既報の酵素BbhIとの機能比較を行うことで、BbhIとBbhIVの異なる精巧な分解様式を観察することに成功した。加えて、ムチン型糖鎖分解にかかわる2つの酵素遺伝子BbhI とBbhIVの二重欠損株を作出してB. breveとの共培養実験に応用することで、ビフィズス菌間でのクロスフィーディングにおけるGlcNAc遊離の意義の解明にも至った。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得た成果をもとに論文発表を行う。また、β-N-acetylglucosaminidase以外のムチン型糖鎖に作用する細胞外酵素にも焦点を当て、本年度と同様の解析を実施する。これにより、B. bifidumを起点とした腸内細菌間のクロスフィーディング機構および腸内細菌叢形成機構の全貌を理解することを目指す。
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