2021 Fiscal Year Annual Research Report
核融合炉ブランケットの中性子輸送とトリチウム増殖現象の実験解析の研究
Project/Area Number |
21J15893
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荻野 靖之 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 核融合 / 中性子工学 / ブランケット / 放射化箔 / イメージングプレート / 中性子輸送計算 / 放射化分析 / エネルギースペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、エネルギー理工学研究所にて保有する放電型DD核融合中性子源を用いて核融合中性子を発生させ、中性子源近傍に設置した直方体形状のブランケット模擬体系内部の中性子フラックスの計測を行なった。 ブランケット模擬体系にはグラファイトおよびポリエチレンブロックを使用し、DD核融合反応で生じた2.45MeVの中性子の模擬体系内部での減衰を確認するために、中性子源から離れる方向へ幅をとって配置し、照射を行なった。中性子計測には、熱領域の中性子を計測対象としたディスプロシウム、熱外領域を対象としたカドミウム被覆のディスプロシウム、および熱・熱外領域を対象としたマンガンの1cm四方に切り出した金属箔を体系内部に5cmの等間隔で模擬体系内部に配置した。金属箔の壊変時に放出されるベータ線、ガンマ線の分析は、二次元放射線検出器イメージングプレートによって実行した。イメージングプレートは、Cs-137およびSr-90を用いることで放射線ごとの校正を行い、またエネルギー感度の違いを補正することで計測を行なった。 金属箔の放射化分析の結果に対して、中性子輸送計算コードPHITSおよび放射化計算コードDCHAINを用いた。まず、金属箔の配置・イメージングプレートの露光時間について、あらかじめ輸送計算および放射化計算を行いフラックスを算出しておくことで、配置についての検討を行なった。次に、中性子照射実験後にイメージングプレートで計測される実験値と計算値の比較・評価を行なった。 中性子照射は中性子発生数約1.22-1.33E7n/sにて実行し、2-3時間の連続照射を行った。照射後に取り出した放射化箔を計測し、計算値との比較を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、放電型DD核融合中性子源を用いたブランケット模擬体系への中性子照射実験、および模擬体系内部における中性子フラックスの金属箔・イメージングプレートを用いた計測実験を行い、これを中性子輸送計算・放射化計算コードを用いて比較・検討した。また、これらの成果について国際学会での発表および論文投稿(査読中)を行なった。当初、DT核融合中性子源を使用した照射実験を予定していたが、特定のエネルギー領域を対象としたブランケット模擬体系中の中性子計測をDD核融合中性子源を用いて実施し、熱領域および熱外領域の中性子が、放射化箔とイメージングプレートを組み合わせることで総中性子フルエンスが500-1000n/cm2/sの計測点において計測可能であることを確認した。また、実験値と計算値との比較C/Eについては、0.4-3.1程度を推移する結果となり、計算値と同一のオーダーで計測できることを確認した。一方で、実験値の誤差は無視できない程度に確認され、また、グラファイトおよびポリエチレン体系での体系の違いによる相違を検証したが、C/Eの精度に顕著な影響が確認されなかった。したがって、本検討においてこれらの誤差がイメージングプレートの校正誤差が大きく影響すると推察している。以上をもって、エネルギー領域の計測が熱中性子、熱外中性子について本手法で分離計測でき、本手法はDT核融合中性子源についても適用できると考えられるため、達成度は概ね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に未完了であったDT核融合中性子源を使用した、ブランケット模擬体系中への中性子照射実験を実施し、複数の金属箔とイメージングプレートを組み合わせることで模擬体系中の中性子空間分布を特定のエネルギー領域別に計測する放射化分析を行う。DD核融合中性子源と異なり、DT核融合中性子源に特有となるしきい値反応を利用した高速中性子の計測を追加することで、3領域の中性子フラックス計測およびこれらの計算との精度比較を実施する。また、これら計測値を利用することで、体系内部に配置されたトリチウム増殖層におけるリチウムのトリチウム生産量の計測が可能であることを検証することを目指す。トリチウム検出の比較として、照射後のリチウム化合物を液体シンチレーションを用いて直接測定した値、および単結晶CVDダイヤモンドとフッ化リチウムコンバータを組み合わせたダイヤモンド検出器による計測値との比較を行うことで、計測結果の精度、妥当性を評価する。DT核融合中性子源は大阪大学の保有するOKTAVIANを用いることを予定している。当該年度に実施できなかった原因とされる感染症拡大の影響は縮小傾向であるが、一方でこれらの影響が実験遂行に支障をきたす事も想定される。したがって、実験環境に極力左右されない実験計画を策定・既存の計画を修正し、滞りなく実験が遂行されることを目指す。これらの実験結果をもって、核融合炉成立以前にブランケット模擬体系内部でのトリチウム生産量の空間分布計測手法を確立できることが期待される。
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