2022 Fiscal Year Annual Research Report
腎エリスロポエチン産生細胞に着目した慢性腎臓病の新規分子基盤の探索
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21J21975
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中井 琢 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | エリスロポエチン / 線維芽細胞 / 慢性腎臓病 / 腎性貧血 / 腎線維化 / 酸素 / 赤血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎尿細管皮質の線維芽細胞には、エリスロポエチン(EPO)を産生する能力を有する細胞(REP細胞)が含まれる。これまでに、腎皮質線維芽細胞集団には、実際にEPO産生能を有するのは細胞(Real-REP細胞)と、分化に伴ってEPO産生能を喪失した細胞(Post-REP細胞)が存在することが明らかとなっていた。また、Real-REP細胞における低酸素誘導性のEPO産生は、腎障害に伴って著しく抑制されるものの、薬理的なHIF活性化(PHD阻害)により一部回復可能であることが確認されていた。 今年度の研究から、 Real-REP細胞は間葉系幹細胞様の特徴を有しており、Post-REP細胞への分化に伴って炎症応答性および低酸素応答性が低下していくことが示唆された。Post-REP細胞は腎障害に伴って著しく増殖するとともに、細胞外基質を過剰に産生することで、腎線維化を促進することがわかった。また、Real-REP細胞のマーカーとして炎症応答に関係する細胞表面タンパク質を同定した。これまで腎線維芽細胞からReal-REP細胞を単離するためには、遺伝子改変マウスを用いる必要があったが、当該タンパク質をマーカーに用いることで野生型マウスからReal-REP細胞を単離することに成功した。本研究成果は、EPO産生制御機構の解明及び腎線維化の分子機構の解明に寄与するものであり、国内学会および国際学会で発表し、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の結果に基づいて、Real-REP細胞標識遺伝子改変マウスを用いてReal-REP細胞の単離に有用なマーカー遺伝子を探索した。複数の候補遺伝子の中から炎症応答に関係する細胞表面タンパク質を同定し、野生型マウスからのReal-REP細胞の単離を試みた。当該マーカーにより単離された細胞は、遺伝子改変マウスから単離されたReal-REP細胞と類似した遺伝子発現様式を示しており、Real-REP細胞であることが確認された。単離したReal-REP細胞のエピゲノム解析を行なったが、得られる細胞数が少なく目的としていた解析結果を得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
少数細胞からのエピゲノム解析が可能な実験系を用いて、単離されたReal-REP細胞およびPost-REP細胞のエピジェネティックな違いを明らかにする。Real-REP細胞由来の細胞株の樹立にも取り組み、in vitroにてEPO遺伝子制御機構を解析することのできる実験系を確立する。また、本研究成果に関する学術誌での研究発表を予定している。
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Research Products
(4 results)