2021 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of snail mucus in determining intertidal community structure
Project/Area Number |
21J40093
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 葉子 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 群集生態学 / 粘液 / 貝類 / 岩礁潮間帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,貝類が普遍的に分泌する粘液の情報源,栄養源としての役割を明らかにし,岩礁潮間帯群集を考える上での粘液の重要性を明示することである。本プロジェクト1年目にあたる2021年度は,北海道忍路海岸に生息するタマキビを対象にし,その高密度での集合に粘液の“情報”がどう関わり,集合によるパッチ状の空間分布や,粘液の”栄養源“としての働きが他生物の分布にどのような影響を与えるのか明らかにすることを目指した。そのため,室内に置いて,よく集合が見られる基質とそうでない基質のどちらに集合するか明らかにするための実験を行った。その結果,よく集合する基質上に行くとほとんど動かなくなり,集合サイズが大きくなっていく様子が観察された。忍路海岸に10台のカメラを設置し,タマキビの集合が形成される様子を夏と冬に撮影,解析した。また,室内にて粘液の存在が集合形成を促進させるのか調べる実験を行った。写真データから解析を行った結果,同じような場所で同程度のサイズの集合が形成されている様子が観察された。また,集合する場所のクロロフィル量が高く,よく集合する場所では藻類が繁茂している可能性が示唆された。今後,野外実験と野外観察を組み合わせ,タマキビの特定の場所での集合や,生物の空間分布に,粘液がどう関わっているのか明らかにしていく。 また,これまでに取得したデータの解析を進め,その成果を2つのセミナーと学会で発表した。同時に,貝類の繁殖特性に関する研究の成果を執筆し,Molluscan researchにて発表した。さらに,2つの学術本へ原稿を寄稿した。 なお,育児により,当該年度に2か月間研究を中断している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,これまで利用していたフィールドから離れ,新たなフィールドで新たな生物を対象とし,研究の立ち上げを行った。当初予定していた生物を研究に利用することが難しく,計画を変更せざるを得なかったが,北海道にて高密度に生息するタマキビの集合特性に着目し,粘液が持つ影響を明らかにするための実験や観察を行った。 加えて,昨年度までに得られたデータの解析と成果発表にも注力した。貝類の捕食者―被食者間コミュニケーションへの粘液の影響について,解析を進め,2度のセミナーと1度の学会発表を通し,論文化に向けた積極的な議論を行っていた。論文執筆に関しては,1本の論文が国際誌に発表され,現在も2本の論文を執筆中である。 当初の計画を修正し,研究を立ち上げ,進展させることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
春,夏,秋に道東にある3つの海岸にて,漂着した昆布とタマキビの集合について調べる。そのために,各海岸に7つの固定ステーションを作成し,写真を撮影する。写真データを用いて,タマキビの分布やその周りの群種構造を調べる。 さらに,忍路海岸にて粘液が集合特性に与える影響を調べるための実証実験を行う。集合する上で重要な要因として働いているであろう地形をそろえた上で,粘液があるプロットとないプロットを作成し,集合確率やそこにできる生物群集を調べる。粘液に集まる微生物に関してはDNAメタバーコーディングの技術を用いて解析を行う。また,海藻相に関しては,クロロフィル量の解析に加え,粘液のC,N,P含有量を調べ,海藻成長への粘液の役割を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)