2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on aesthetics, theory of time and space in Brentano School, aimed at contribution to the phenomenology
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21K00017
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
村田 憲郎 東海大学, 文学部, 教授 (80514976)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現象学 / 時間 / 空間 / 知覚 / ブレンターノ / フッサール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度となる2021年度は、まずはこれまでの研究をより発展させた形で、初期フッサールとブレンターノの関連を再び精査する作業に取り組んだ。フッサールの最初期の著作『算術の哲学』や、その直後の論文「基礎論理学のための心理学的研究」「志向的対象」などを通読し、当時のフッサールにおける時間と空間の問題の位置づけを確認した。それと並行して、フッサールが哲学に転向した契機となったブレンターノの1884/5年の講義の内容を、昨年度末に刊行された新たな資料をもとに検証し、あわせて両者の関係のコンテクストをなす、同時代の数学の議論をも確認した。 この研究の成果は、2022年3月のフッサール研究会にて「ブレンターノ1884/5年講義「基礎論理学とそこに必要な刷新」について」と題して発表された。そこでブレンターノは、既刊の1880年代の講義ノート『記述的心理学』と同様の内容を講義しており、ちょうどフッサールと出会った時期に、記述的心理学のプログラムを発展させつつあったことがうかがわれた。またそこで目を引くのは、ボルツァーノや同時代のカントールの数学的な連続体論に対して、ブレンターノがかなり立ち入った批判的検討を加えていることである。晩年のものとされる遺稿集『空間、時間および連続体についての哲学的研究』の議論の多くがそこで先取りされており、彼がこの議論に一貫した関心をもっていたことが確かめられた。 ブレンターノの連続体の議論の位置づけについてはまだ明らかではないが、彼自身が生涯をつうじて従事し、またブレンターノ学派をなす弟子たちにも継承された議論であるから、この議論の発展を跡づける作業は今後も継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調」とした理由について、計画通り進んでいない点と、予想外に進んだと評価できる点がある。前者については、前年度に続くコロナ禍により、本研究の初年度に見込んでいた計画が実施できなかったことが挙げられる。計画ではブレンターノ学派のキーパーソンでありながらほとんど研究されていないシュトゥンプフの、とりわけ大著『空間表象の心理学的起源』に着手する予定であったが、校務や講義準備に大きなエフォートを割かざるをえなかったため、この課題はそれほど進められなかった。 また後者について言えば、前年度に進めていたブレンターノの講義ノート研究に関する新資料が2020年度末に公刊されたため、その資料の検討を優先するよう計画を変更したという事情がある。この講義はブレンターノとフッサールの関係を見る上で見過ごせないものであるため、本年度はこの資料の研究を主要な課題とした。ただし、これとあわせて上記のように最初期フッサールの著作『算術の哲学』や1890年代の論文なども検討し、また同時代の数学の調査なども行ったため、これまであまり触れられたことのない議論について十分な理解に達することができ、当初の計画とは異なるが、実りの多い年度となったと言える。 いずれにしても、ここ数年の状況の不透明性により、研究計画を状況に合わせて変更し、着手できることから着手していくという方針をとっており、この方針に沿った限りでは順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本来計画していたシュトゥンプフの空間論の検討があまり進まなかったので、次年度も引き続きこの著作を引き続き読み進める。大著であるが重要な著作であるからじっくり取り組みたい。 またそれと並行して、フッサールの初期時間論を扱った以前の研究課題の諸成果を体系的にまとめる作業を進めながら、マイノングとエーレンフェルスの議論を再検討する。こちらの課題については、すでに論文や翻訳を数点公刊しているので、それを足がかりとしつつ、心理学史における「ボーリング史観」のような、グラーツ学派についての従来の理解に収まらないような諸点に注目していきたい。
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Causes of Carryover |
すでに述べたように、本年度はコロナ禍により、当初の計画どおりに研究をすすめることができなかった。そのような理由もあり、あらかじめ収集した文献をもとに研究を進め、次年度以降コロナ禍が明けてからの出張費などを見込んで、経費を節約する方針とした。 またとりわけ、以前にフッサールの時間意識の研究にて取得した基盤Cをもとに、国際ワークショップを計画していたが、2020年度からのコロナ蔓延防止措置により実現できなかったものがあり、そうした計画についても可能であれば見直して、実現の可能性を見積もっていきたい。
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Research Products
(3 results)