2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research on aesthetics, theory of time and space in Brentano School, aimed at contribution to the phenomenology
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21K00017
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
村田 憲郎 東海大学, 文学部, 教授 (80514976)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現象学 / 時間 / 空間 / 感性 / フッサール / ブレンターノ学派 / ゲシュタルト心理学 / メルロ=ポンティ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる2023年度は予定通りシュトゥンプフの『空間表象の心理学的起源』に取り組んだ。研究成果の発表には至らなかったが、全体の試訳を作成しながら読み進め、大半を消化することができた。本著作の概要は以下のとおり。 まず当時の空間の捉え方がいくつか分類される。第一に、通常の感覚質の単なる複合物(ヘルバルト)、第二に、独立した特殊なモダリティをなす感覚(筋肉感覚)の質(ベイン)、第三に、そもそも質ではなく、感覚に由来しない(カント、ヴェーバー、ロッツェ)、第四に、感覚質と分離不可能な仕方で表象の内容を形成している(シュトゥンプフ)、とする四つの立場がある。最初の三つの説に批判的検討を加えたのち、自身の第四の立場が正当化される。 後半の第二部では以上の議論を受けて、空間の第三の次元である「奥行き」について論じられる。表象内容とされた空間は、それ自体として三次元的であるのかという問題が提起され、ここでも、視覚感覚は本質的には二次元だが連合により第三の次元が構成されるとする説など、当時の他の諸説を批判的に吟味しながら、奥行きという第三の次元は表象内容としての空間に根源的に備わる特性だとする立場を擁護する。両眼視における網膜への刺激などにも配慮しつつ、奥行きの諸関係は直接的には、その全体性においてではなく、その最小限のあり方において見られていると結論づける。 前半は当時の空間論のサーヴェイとなっており、自説を展開する5節ではフッサール『論理学研究』につらなる全体と部分の理論が展開され、また後半ではメルロ=ポンティの『知覚の現象学』における奥行き論を先取りするような方向性も見られた。これらの点については発表を準備中である。 その他、エーレンフェルス、グラーツ学派とゲシュタルト心理学の流れを扱ったエッセイが近日中に発表される予定である。現在はこれまでの諸研究全体を総括する作業を進めている。
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