2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大北 全俊 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70437325)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 責任 / 医療・公衆衛生 / COVID-19 / 国家 / 統治 / ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
医療・公衆衛生領域における責任概念の検討にあたって、2021年度は主に公衆衛生領域なかでもCOVID-19対策を対象として検討を行った。 西欧諸国などで実施されたいわゆるロックダウンと呼ばれる強制的措置と日本で実施された自粛・行動変容を主とする対策とを比較し、個人と国家等公衆衛生機関とのリスク・マネジメントの責任の配分について検討を行った。COVID-19のような感染症対策に限定されず、より広くヘルス・プロモーション領域などにおいても観察される事象として記述を試みた。また、日本の対策の特性を歴史的に記述するために、感染症法や予防接種法などの主たる感染症法規の変遷についても、法規の変遷の契機となる出来事と合わせて調査を行った。以上により、自由主義から新自由主義へ進展したとされる社会において、公衆衛生の位置付けが責任概念を軸にいかなる仕方で変遷しつつあるかということの概要を明確にした。 また、感染予防など疾病予防・健康増進に関する個人の責任については、上記のような責任の配分に関する検討と並行して、「セルフ・ケア」「自己への配慮」という視点からも検討を始めた。ケアをめぐる諸議論およびミシェル・フーコーの自己の統治に関する文献等を参照しつつ、リスク・マネジメントとして記述される傾向のある疾病予防・健康増進という行為をいかに違う仕方で記述が可能か試みを始めた。当該記述の試みは、ビッグデータの利活用によるセルフ・モニタリングといった来るべき社会における個人のあり方についても射程に含むものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、COVID-19対策を軸に個人及び国家等の公的機関の責任の配分に関する議論については、おおよその概要について把捉することができ、論文化の作業に着手できている。また、個人の負うべき責任について、より発展的な議論を展開する可能性も見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の主たる業績内容であるCOVID-19対策を軸とした責任の配分に関する議論の論文化とともに、個人の負うべき責任についてのリスク・マネジメントとは異なる記述可能性についてより探求を試みる。また、公衆衛生領域に続き、医療領域における医療者の責任に関する検討を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額発生の理由は、主にCOVID-19感染拡大により研究会や学会への参加にかかる旅費等の使用が制限されたためである。次年度には、COVID-19の感染状況にもよるが、研究会や学会への参加、他の関連研究者との会合などに係る旅費等の諸経費に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)