2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K00026
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋葉 剛史 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (30756276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 存在論 / 真理論 / 多元主義 / 存在の階層 / 実現関係 / 非還元主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究で設定した三つの下位課題(課題I―III)それぞれについて以下のような研究を行った。 まず、課題I(真理の多元主義の解明と定式化)に関わる研究として、真理の多元主義のなかでも最も有力な枠組みと考えられる真理の機能主義の最良の定式化を探るための考察を行った。より具体的には、M・リンチが与えた真理の機能主義の標準的な定式化を改良する提案を行った。(論文"A functionalist account or truth-grounding"として投稿し査読中)。 課題II(存在論的多元主義の展開)に関しては、世界をいくつかの還元不可能な「階層」からなるものとして捉える非還元的物理主義に関わる考察を行った。より具体的には、力能サブセット説と呼ばれる立場にもとづく非還元的物理主義の定式化を検討し、それに対してなされるある重要な批判から同立場を擁護する議論を行った。その成果は英語論文として学術誌に投稿し採用された(論文”The subset view of realization and the part-whole problem”)。また、具体的個物とは異なる存在様態をもつと考えられる「トロープ」(個別的なものとして捉えられた性質)について、その導入の動機づけと理論的役割を包括的に検討し、その成果を招待講演にて発表した(講演「トロープとは何か:その意味と役割」)。 課題III(哲学史的考察)については、前年度に引き続きメルロ=ポンティの存在論の内実と射程を明らかにする研究を行った。また、19世紀後半から20世紀初頭にかけブレンターノ学派において行われていた存在の多義性と一義性をめぐる議論について整理と考察を行い、それらの議論が現代の存在の多元主義をめぐる議論を実質的に先取りしたものになっているという見通しを得た。(いずれについても成果は発表準備中。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請時に設定した三つの下位課題について、2023年度中の研究によってそれぞれに関して上記のような進展があった。とりわけ課題IとIIに関しては、論文および発表のかたちで具体的成果につなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も引き続き、上述した三つの課題に取り組む。なかでも、課題I(真理の多元主義の解明と定式化)および課題II(存在論的多元主義の展開)に関しては、論文のかたちで発表できる内容が固まりつつあるので、それらを具体的成果として結実させるための作業を優先的に行う。課題Iに関しては、真理の機能主義のさらなる展開可能性として、心の哲学における目的論的機能主義との関連づける道を探ることを予定している。また課題IIについては、存在の「階層」ないし「レベル」というアイディアを具体的に定式化する方法を、哲学史および科学哲学における議論と関連づけながら多面的に模索する。
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