2021 Fiscal Year Research-status Report
A Comprehensive and Comparative Study of the Structure of Dogen's Thought from the Perspective of Mahayana Buddhist Ontology
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21K00027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
頼住 光子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90212315)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 道元 / 『正法眼蔵』 / 大乗仏教の存在論 / 比較思想的探究 / 親鸞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の目的は、(1)道元の思想構造を、その独自の世界把握を軸に『正法眼蔵』等テクスト内在的に解明する。(2)(1)を基盤とし大乗仏教の「存在論」という観点から道元の思想的意義を比較思想の手法も含め多角的に検討解明する、という2点である。 (1)については『正法眼蔵』の本文校訂、諸異本の校合、道元が典拠にしたと推定される典拠の調査、道元の文体研究に基づき、テクスト内在的に、とりわけ「縁起―無自性―空」に焦点を当てて、存在論の観点から研究を遂行した。研究成果の一部について論文発表、国内外の口頭発表を行い、さらにその研究成果を総括すべく『正法眼蔵』の精密な註解に基づく研究書を執筆中である。 (2)については、大乗仏教の「存在論」としては道元と対照的な親鸞のそれに着目した。とりわけその存在論の中心軸に位置する「法性」「法身」「自然法爾」を検討した。その上で、これまで申請者が蓄積してきた道元思想の研究に基づき「存在論」に関する議論を総括し、親鸞の存在論と比較検討し、それぞれの特徴を浮かび上がらせると同時に、大乗仏教思想としての共通性についても解明した。従来の日本仏教の思想的研究には、宗学(宗祖への信仰を基盤とした宗派の枠組みでの研究)の影響力が大きく、研究対象を特定の宗派内に限定する特徴的傾向があった。また、研究の細分化が過度に進んだ結果、複数の異なる傾向の仏教思想家を横断的に、広い視野から研究することが避けられる傾向も見受けられた。しかし、総合的な日本仏教研究の必要性が叫ばれる現在、本課題研究は、学術的手続きを踏んだ上で、道元と親鸞という、それぞれ禅宗、浄土真宗という異なる宗派に所属する対照的な思想家を取り上げた。そして両者を「存在論」の観点から比較思想的手法によって研究し、その成果の一部を論文発表、口頭発表のかたちで公表したことは学界に一石を投じたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究の一つ目の目的である、「(1)道元の思想構造を、その独自の世界把握を軸に『正法眼蔵』等テクスト内在的に解明する」に関しては、当初の予定通り、「現成公案」「摩訶般若波羅蜜」「仏性」「有時」「山水経」等、存在論の観点から重要な意味を持つ諸巻を取り上げて、その本文の、校訂、諸異本の校合、書写本等の調査を行い、さらに、道元が『正法眼蔵』執筆の際に参照したと推定される中国禅の典籍の調査収集を行った。これらの文献的研究を踏まえた上で、上記諸巻の全文注釈を行った。その際、従来十分に解釈されていたとは言い難い難解な箇所については、『正法眼蔵』全巻の用例を参照したり、その特異な文体を類型化したりしつつ読解の精度を高めた。さらに、今年度は、当初予定をしていなかった「古鏡」「礼拝得髄」巻についても前述の作業を進めることができ、この2巻が道元の存在論を考える上で重要な巻であることが判明した。これらの成果の一部については、研究発表を行った。 また、本申請研究の二つ目の目的である、「(2)(1)を基盤とし大乗仏教の存在論という観点から道元の思想的意義を比較思想の手法も含め多角的に検討解明する」に関しては、まず、親鸞の思想について主著『教行信証』を中心として他の諸著作、書簡、関連する語録を中心に、特に道元の存在論との比較において重要である「自然法爾」論を中心として調査、検討を進めた。これらの研究成果の一部については、今後、論文、口頭発表する準備を現在進めている。 さらに、道元思想の存在論的展開という観点から、道元の自然観を検討し、その成果の一部については、欧米・アジアの禅宗研究者を中心とした国際学術集会(Zoom開催)で発表した。また、より詳細な研究を論文と口頭発表する準備を現在すすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず、これまで扱っていない『正法眼蔵』諸巻のうち、存在論という観点から重要な意味を持つ巻を選んで、本文の、校訂、諸異本の校合、諸書写本の調査を行い、道元が『正法眼蔵』執筆の際に参照したと推定される中国禅の典籍の調査収集を行う。以上を踏まえ、上記の『正法眼蔵』の当該巻について (1)従来解しがたいとされ、十分に解釈されていない難読箇所については、『正法眼蔵』全巻の用例を参照して解釈を行う。また、特異な文体については類型化し解釈を検討することで読解の精度を高める。 (2)上述の校訂、註釈、解釈作業に基づき、存在論を中心とした道元の思想的構造を解明する。その際に自然観についても充分に注意を払い研究を推進する。 (3)大乗仏教の存在論としての道元思想の解明のための基礎作業を続行する。具体的には『教行信証』等親鸞の著作や主要大乗仏典に関する文献の調査収集である。 (4)以上の成果について学会で口頭発表、論文発表、研究報告等を行なう。特に、海外発信について留意する。
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Research Products
(6 results)