2021 Fiscal Year Research-status Report
ヘーゲル哲学における生と死の継承 古代ローマのペナーテース
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21K00033
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小島 優子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (90748576)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 生命 / 死 / ペナーテース |
Outline of Annual Research Achievements |
古代ローマのペナーテースについて文献調査を行い、ローマの祖先崇拝という観点から、ヘーゲルの家族の精神について研究を行った。ペナーテース信仰は祖先崇拝を起源としており、祖先の霊が死後も家の中で過ごすことができるように祖先の像は家の中で最も敬意が払われた場所に保存された。ローマ人は宗教という言葉を持たず、日頃の慣行の中で儀式を行うことが重視され、死者のための饗宴も家の中で行われた。 さらに古代ローマでは、国家の公的祭祀の多くは家族を起源としていた。国家にも守護神としてのペナーテース・プブリキがあるとされ、家族の守り神であるだけでなく、共同体全体で享受するあらゆる幸福を分与するものとされたことから、ペナーテースの分析を通じて、ヘーゲルにおける「家族の精神」の分析に新たな視野を開くことができることを探求した。 この研究を通して、ヘーゲルがペナーテースに家族の精神を見出すのは、個人は類やペナーテースが駆動するための乗り物にすぎず、精神の力と運動性を重視するからであることを見定めた。この考察のために、『自然哲学』の中でヘーゲルが概念的な発生論としては、胚か内容面では何ら新しいものは現れないが、形式的には変容を遂げるとする立場を考察した。受精卵から内容的に新しいものは現われず、生殖の自然性よりも精神性を重視して類・ペナーテースの駆動にヘーゲルが精神の運動性を見ることを探求した。当時の発生論についての資料を収集し文献調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内出張および外国出張の計画を立てて図書館で文献調査を行う予定であった。しかし、感染症の影響で出張を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症の影響で国内外の出張が難しいと思われる。このため文献調査はオンラインで行い、内外の研究者との研究会もオンラインで開催する計画を立てることにする。
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Causes of Carryover |
国内出張および外国出張の計画を立てていたが、感染症の影響で行うことができなかった。このため予算を書籍費に振り替え、残額は次年度に繰り越した。
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