2021 Fiscal Year Research-status Report
The Reception of German Philosophy in France through the Study of Spinoza by Victor Delbos
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21K00035
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
近藤 和敬 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90608572)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス哲学史 / ヴィクトル・デルボス / スピノザ研究 / 社会学と哲学 / 20世紀初頭の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、19世紀末から20世紀初頭にかけてとくに哲学史の分野で業績を残したヴィクトル・デルボスのスピノザ解釈について、とくにその政治学・社会学的な含意についての理解を深めるために、19世紀末の社会学の分野でみられるスピノザへの言及とその影響関係について調査をおこなった。 とりわけ同時代において社会学の祖とされるエミール・デュルケムにおけるスピノザへの暗黙の言及に注目し、デュルケムの博士論文である『モンテスキューの社会科学への貢献』における法の定義にみられるスピノザの法論との関係に着目し、研究を進めた。そこでは、オーギュスト・コントによるモンテスキューの法の定義への参照とともに、自然法則の意味での法と、自然法の意味での法のあいだの共役可能な意味が問題とされており、一般に非自然科学的現象と考えられる法学領域の問題について、デュルケムが自然科学的に、あるいは実証主義的にアプローチする際に、スピノザとの関係が問題になる可能性が示唆された。 また、デルボスの著作の部分訳を進めており、研究期間中の公表を目指している。 また、本年度はデルボスの博士論文である『カントの実践理論の形成についての試論』のための公開討論会である『自由についてのカント理論について』の翻訳を進めた。それによって、来年度に予定しているそこでの討論参加者、とくにラシュリエとのあいだの解釈上の違いなど、議論の文脈分析のための準備を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画になかったデュルケムとの比較にかなり時間を要しているが、19世紀末の状況を把握するうえでは不可欠な行程であり、最終的な成果には着実に近づいていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、デルボスのカント研究の位置づけと当時のフランスのドイツ哲学史の文脈を明らかにする計画となっている。 とくに彼の博士論文についての公開討論会の記録である『自由についてのカント理論について』は、当時のフランスの著名なカント研究者が一同に会し、デルボスの自由概念について検討を加えており、本年度の研究においてもこの公開討論の分析が重要な位置を占めることになると思われる。 また、デルボスの博士論文とその増補版とのあいだの理論的な差異についても解明する準備を進めていきたい。
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