2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on the concept of nature in phenomenology, with a focus on that of Heidegger
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21K00040
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
金成 祐人 帝京大学, 理工学部, 講師 (80880707)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 現象学 / フッサール / ハイデガー / 自然 / 大地 / 世界 / デリダ / ピュシス |
Outline of Annual Research Achievements |
現象学における自然概念の多義性と諸特徴を分析することを通して、人間と自然の同質性と差異性を明らかにするという本研究の目的のために、本年度は次の二つの側面から研究を進めた。 ①ハイデガーとフッサールの比較研究 ②デリダを参考軸としたハイデガーのピュシス論の研究 ①については、前年度からの研究を継続し、日本哲学会第81回大会(九州大学)にて「現象学における自然の問題──フッサールとハイデガーにおける自然と大地について──」と題しての個人一般研究発表を行った。フッサール『イデーンⅡ』における「自然の側面」と、ハイデガーの形而上学期の「全体における存在者」としての自然を接続し、それらの発展的継承としてフッサール「自然の空間性の現象学的起源に関する基礎研究──コペルニクス説の転覆──」の「大地」およびハイデガーの諸テクストにおける「大地」を解釈した。また、両者の大地概念の共通項として、意味的世界の基盤という特徴を取り出した。先行研究ではあまり論じられてこなかった両者の自然と大地の概念の接続を示し、現象学における自然概念の多義性と共通する特徴を明らかにすることができた。 ②については、ハイデガーにおける「ピュシス論文」とヘラクレイトス講義における「ピュシス」から、 『芸術作品の根源』と『物』講演での「大地」がどのように発展的に展開してきたのかについて、デリダ『獣と主権者Ⅱ』が着目する「支配すること(主宰すること)(Walten)」の「超-主権」ないし「過剰-主権」という特徴づけを参照軸として研究を進めた。存在論的差異に先立ち人間が投げ込まれている自然としてピュシスを解釈し、次年度も継続的に研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイデガーとフッサールの比較研究について、日本哲学会での個人一般研究発表を実施することができた。また、ハイデガーとデリダに関する文献の収集と読解をある程度進めることができた。他方、予定していた研究発表の論文刊行までには至らなかったため、やや遅れていると判断し、これについては次年度の目標とする。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度前半には、デリダを参照軸として、ハイデガーの「ピュシスの本質と概念とについて──アリストテレス『自然学』B, 1」(GA9所収)とヘラクレイトス講義(GA55所収)における「ピュシス」、「芸術作品の根源」(GA5所収)とブレーメン講演(GA79所収)での「大地」についての研究を継続し、学会発表と論文投稿を予定している。 また、次年度後半には、メルロ=ポンティ研究を予定している。『見えるものと見えないもの』で展開されるような、触れるものと触れられるものとの同一次元の共有、講義ノート『自然』における、現代物理学、生物学、精神分析の知見をも用いた自然概念の探究を取り上げ、人間の身体性と自然の原初的連関を明らかにする。主観-客観の二分化に先立つ肉の内的絡み合いの次元から、哲学的反省や言語的理解に先立ってすでに成立している自然と人間の関係を、フッサールとハイデガーのそれと対比させながら明らかにする。年度末頃の研究発表を予定している。
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Causes of Carryover |
研究に必要な書籍や備品を順当に購入していったが、文献の精読に時間をかけたため、書籍購入のために予定していた数万円分に未使用額が生じた。研究内容が継続しているため、次年度の書籍購入で使用する予定である。
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