2021 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive study of "kayotsarga" with special reference to Avasyaka literature
Project/Area Number |
21K00048
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河崎 豊 東京大学, 附属図書館, 助教 (70362639)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤永 伸 京都光華女子大学, 付置研究所, 研究員 (70209071)
名和 隆乾 大阪大学, 文学研究科, 講師 (20782741)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ジャイナ教 / アーヴァッサヤ・ニッジュッティ / 瞑想 / カーヤ・ウトサルガ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,ジャイナ教の瞑想論で重要な位置を占めながらも等閑視されてきたカーヤ・ウトサルガ(毒蛇に咬まれても不動で一定の姿勢を保ち(苦行),身体を放棄すべき存在と念じる(瞑想)もので,物理的・精神的双方の側面で身体を放棄する)について,まとまった情報を持つ最初の文献である『アーヴァッサヤ・ニッジュッティ』(以下AvN)第19章を中心に総合的な研究であり,年限で①AvN及び関連文献に基づくカーヤ・ウトサルガの解明②AvN前後のジャイナ教文献に基づく同実践法の解明③仏教やヨーガ学派におけるカーヤ・ウトサルガに類する瞑想法との比較研究④現代の白衣派ジャイナ教テーラーパント派が開発したプレークシャー瞑想におけるカーヤ・ウトサルガの検討,を行なう.今年度は研究実施計画に即して以下のことを行なった: 1.AvN全体を入力し,今回扱う19章に対するハリバドラ・ヤーキニープトラ(8-9世紀)の注釈も併せて全て入力して検索可能なデータとした. 2.AvN19章をハリバドラ・ヤーキニープトラ注とともに読解し訳了した.あわせて今年度は10月から月1度の頻度で翻訳の検討会を分担研究者・研究協力者とオンライン上で行ない,おおむね半分の分量について検討を終了した. 3.9月に開催された日本印度学仏教学会に参加し研究発表を行なったほか,今回の研究課題に関連する情報を収集した. 4.ジャイナ教の瞑想に関する一次・二次資料の収集につとめたほか,仏教やヨーガに関する過去の諸研究に関する情報の収集を行なった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定されていた国際学会がコロナ禍で中止となり,そこでの情報収集や意見交換ができなかったものの,そのほかの点についてはおおむね当初の計画通りに研究が進行している.研究計画書で記した,AvNに対するもうひとつの注釈である『アーヴァッサヤ・チュールニ』の解読については,現在唯一の刊本の読みが基本的によくないため,参照程度にとどめる方針に切り替えた.これらの点を勘案し「おおむね順調な進展」と判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い,以下の点について推進する: 1.AvNと顕著な対応を示す空衣派ジャイナ教聖典『ムーラーチャーラ』第七章を,ヴァスナンディの注釈とともに読解し AvN との異同を検討する. 2.カーヤ・ウトサルガ解説で多く典故とされるヘーマチャンドラ作『ヨーガシャーストラ』(12世紀)以前かつ AvN(3-4世紀)以降の文献を対象とし解釈の展開を具体的に跡付ける.教理文献の定義的用例と,説話文献の具体的表象の両側面から検討することで,複合的な理解を得ることができる.具体的には,白衣・空衣両派で権威とされる教理書『タットヴァールタスートラ』に対し7世紀から10世紀に著されたプージャパーダやシッダセーナらの諸注釈と,ヘーマチャンドラ以前の者による説話文献を検討することが,有意義な結果をもたらすと考える. 3.瞑想法に特化した文献,特に空衣派の『ジュニャーナアルナヴァ』(11世紀)を検討する.当文献はヘーマチャンドラの依拠資料とされ,ジャイナ教にタントラ的行法を初めて導入するなど,重要な役割を果たした文献であるため,有意義な結果を得る可能性が高い. 4.仏教・ヨーガ派との異同:研究分担者および協力者が中心となって、仏典・ヨーガ文献から関連記述を検討する.仏教・ヨーガ派における身体と瞑想の関係,カーヤ・ウトサルガで実践される呼吸法との比較,また仏教の身念住との比較が,有意義な結果を残すと考える.
|
Causes of Carryover |
旅費として予定していた予算が、コロナのために国内外の学会がキャンセルもしくは延期されたことにより使用できず次年度使用額が発生した。日本以外の諸外国ではウィズ・コロナの状況にあり、今年度はより自由な渡航が可能となると思われるため、今年度の特に海外旅費として計上する。
|
Research Products
(4 results)