2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00051
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
洲脇 武志 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (10625156)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家学 / 許懋 / 礼学 / 王倹 / 南朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、礼学を「家学」としている一族について検討すべく、南朝から隋唐の正史(『三国志』『晋書』『宋書』『梁書』『陳書』『南史』『隋書』『旧唐書』『新唐書』)について、特に隋の許善心・唐の許敬宗を排出した許氏に関連する記述を精査した。その成果が「南北朝時代前半期における許氏とその学術」(『愛知県立大学日本文化学部論集』第13号、2022年)である。 本論文では、魏の許允から唐の許敬宗までの事績を調査し、(1)隋の許善心・唐の許敬宗親子に代表される許氏の家学は梁の許懋を始まりとし、許懋以降、家学として継承されている、(2)許氏の家学には「故事」や「儀注の学」といった礼学・史学・「属文」(作文能力)の三つがあるが、礼学は許懋から、史学は許亨から、「属文」は許善心から始まり、家学を継承しながらその領域を拡大している、(3)許懋の学術は南斉の国学やそれに関連する交友関係(王倹など)に由来するものであり、特に礼学が選択されたことについては、許懋が生きた劉宋末から梁初における時代背景が大きく影響している、という三点を明らかにすることができた。家学を有する一族は数多く存在するが、許氏のように家学誕生の状況が窺える事例は貴重な存在である。また、許氏の事例は、学術の伝播・継承や領域の拡大という観点からも注目すべき事例だと言える。 なお、許氏について精査していく過程において、研究開始時に家学を有している推定した一族(「蔡氏」「王氏」など)以外の一族を見出すことができた。これら新たに発見した一族については、可能な限り検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南北朝から初唐における「家学」の成立と展開を研究する本課題において、本年度は許氏の事例について検討し、一定の成果を得ることができ、論文として公表することができた。また、当初の計画において発見できていなかった家学を有すると推定されてる一族を発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、蔡氏と王氏の家学について検討していく。蔡氏は南朝において当時から「礼学」を家学とする一族と知られ、また王氏は南朝を代表する貴族であり、ともに歴代の南朝王朝における礼の制定に深く関与しているため、特に政治(礼制度の制定や王朝主導の文化事業なども含む)との関わりに注目して検討を進めていきたい。 また、新たに発見した家学を有していると推定される一族についても可能な限り調査し、成果として報告できるようにしていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、国内での移動が制限され、資料調査や学会参加の中止を余儀なくされたため、旅費の使用予定が大幅に減少した。 次年度では資料調査や学会参加が可能な状況になり次第、これらに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)