2022 Fiscal Year Research-status Report
中国地方道教史における扶鸞文化の革新的役割に関する学際的研究
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21K00052
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
志賀 市子 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (20295629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
シッケタンツ エリック 國學院大學, 神道文化学部, 准教授 (10593204)
森 由利亜 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247259)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 扶鸞 / 江朝宗 / 悟善社 / 青蓮教 / 先天道 / 同善社 / 閔一得 / 玉皇宮主 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、共同研究として2回の研究会(オンライン)を開催し、ゲストも交えて、各自の研究の進捗状況や今後の共同研究の計画について討論を行った。第1回は2022年10月29日に①エリック・シッケタンツ「江朝宗と悟善社について」と②小武海櫻子(ゲスト)「近代マレーシアにおける青蓮教系教派について」、という二つの報告を行った。シッケタンツは、本発表で民国期の政治と扶鸞についての研究の方向性をほぼ固めた。小武海の報告は、扶鸞と関連の深い先天道、同善社のマレーシアにおける展開に関するもので、本研究計画ではカバーできていない領域を補う貴重な情報提供となった。 第2回は、2023年2月5日に①森由利亜「閔一得『呂祖師三尼醫世説述』の形成」②志賀 市子「19世紀飛鸞救劫運動の本土化と地方宗教:粤西鑑江流域の「玉皇宮主」信仰を中心に」、という二つの報告を行った。森は今後とも清代の呂祖扶鸞信仰と内丹や龍門派の関係を探っていく予定である。志賀は玉皇宮主信仰を事例として、ジェンダーの観点から見た扶鸞信仰、扶鸞の口承伝統と書承伝統を媒介する役割について論じた。この他研究会では、最終年度に開催する国際ワークショップとその成果出版についても、踏み込んだ議論を行った。 個人では、メンバーそれぞれが扶鸞に関わるテーマの論文を執筆したり、口頭発表をしたりと、着実に研究を進めている。志賀は上記の論文を台湾の雑誌に発表した他、粤西地域の経堂の「儒壇」を称する科儀書の解読を進めた。森は前年に引き続き、17世紀中国の常州の内丹家である朱元育と潘易庵の内丹修養法について研究するとともに、19世紀に湖州金蓋山を中心に活動した内丹家であり呂祖扶ケイ信仰の実践者でもある閔一得の『呂祖師三尼醫世説述』の成書について検討した。シッケタンツは江朝宗に関する資料研究を進め、シンガポールでその成果の一端を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に開催する予定の国際ワークショップにおけるテーマが明確化し、メンバー全員の研究テーマもそれに向けてほぼ固まり、資料収集や分析を進めている。 またコロナ禍が収束したことで、海外での調査や資料収集が可能となってきたことも、今後の研究の進展にプラスに働くことが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究としては、本年度前半に海外の扶鸞に関する最新の研究、とくにVincent GoossaertのMaking the Gods Speak: The Ritual Production of Revelation in Chinese Religious History(Harvard University Asia Center,2022)をテキストとして読書会を開催し、扶鸞に関わる研究課題や理論の整理を行う予定である。後半は、最終年度のワークショップに向けた予備報告会を開催する。 個人研究としては、志賀は8月に台湾で世界宗教博物館所蔵の鸞書の資料調査と台南でのフィールドワークを予定している。森は扶鸞で作成された清代の内丹書の解読を進めていく予定である。シッケタンツは江朝宗と悟善社の研究をさらに進めるため、関連資料の購入を予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍による海外渡航制限が続いており、当初予定していた海外調査を遂行できなかったため、それに伴う旅費が計上されなかったことが大きな理由である。また、2回の研究会はすべてオンライン開催であったため、旅費を必要としなかった。さらに、海外からの研究者の招聘ができなかったことやまとまった資料の購入予定がなくなったこともある。2023年度以降はコロナ禍も収まり、海外調査や海外研究者の招聘が可能になると予想されるので、本来の研究計画に沿って使用する予定である。
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