2021 Fiscal Year Research-status Report
佐藤一斎と大塩中斎の陽明学理解について―文献学的研究をもとに―
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21K00056
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大塩中斎 / 陽明学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「大塩平八郎の乱」によってのみ大塩中斎(大塩平八郎)の名が知られている今日から見ると意外なことではあるが、大塩中斎は大阪の町奉行としての、キリスト教に対する厳しい弾圧で当時著名であった。そのため、「反キリスト教文献集『破邪集』の日本における出版とその影響について」(『東アジアの王権と秩序;思想・宗教・儀礼を中心として』、汲古書院、pp.717-732、2021年10月)において、江戸期後期より明治初年にまで至る、儒家のキリスト教に対する批判の諸相をまとめた。従来、文献学的な見地から同書についてまとめた研究が乏しかったため、本論文は国内外より一定の反響を得ることができた。 また、大塩中斎は王守仁の残した文献に関する強い関心で知られているが、そのうちの特に重要であり、王守仁(王陽明)の朱子学よりの独立宣言と称すべき重要文献である『朱子晩年定論』の、中国に現存する、従来全く触れられることの無かった明代における版本について分析を行ったものが「思想史研究における文献学の有用性について―『朱子晩年定論』を一例として―」『東洋の思想と宗教』第39号、pp.1-18、早稲田大学東洋哲学会、2022.3)である。本論文で取り上げた版本は永冨が中国地方の博物館より発掘したものであり、従来全く分析がなされていなかったものであるため、本論文は発表後間もないのにもかかわらず、陽明学研究者よりの一定の反響を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの研究状況はおおむね順調に進行しているものの、コロナ禍により、日本内外での資料調査、殊に中国での資料調査を行うことができず、資料調査に基づき分析を行うはずだった部分について、遺憾ながら進捗に遅れが存在している。 関係する部分の研究については、国内の研究機関の蔵書で不完全ながら代替できる部分があるかどうかについて調査中であり、できる限り研究結果に影響が出ないように鋭意検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような客観情勢によって、中国での資料調査の再開時期を見通すことができないでいるため、計画においては中国国内での調査および複写を行うはずだった部分について、国内の研究機関の蔵書で不完全ながら代替できる部分があるかどうかについて調査中であり、できる限り研究結果に影響が出ないように鋭意検討しているところである。 その結果として、国内部分の資料に関する分析が、計画当初よりも多くの比重を占めることになることが予想される次第である。
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Causes of Carryover |
本研究に必須の資料である、古典籍の閲覧のための交通費、複写の経費として上述の金額を計上した次第である。
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