2023 Fiscal Year Research-status Report
漢魏六朝期における「人間観」の展開―性三品説を前提として―
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21K00057
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷川 隆一 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (40897013)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中国古典 / デジタルテキスト / 翻訳論 / 正統論 / 後漢 / 北宋 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は3つの報告と1本の論文を刊行した。大きな研究の方向性としては、①:資料論・研究作業論を中心とした研究の基盤、②:個別対象に焦点を当てた研究論文・報告 ①:本研究は漢文資料の読解を前提としている。シンポジウム報告「正史『三国志』の立場から」(シンポジウム「翻訳文学の多様性――三国志を中心に――」 2024年3月17日)は、白文から訓読を経て、現代語訳に至る過程を論じた。わたしが普段行っている作業を明確に言語化することにより、研究の基盤をより堅牢にすることに成功した。また、国際会議報告「中国古典研究におけるデジタルテキストの有効的活用方法」(第十五回東アジア人文学フォーラム(第十五回東アジア人文学フォーラム於南開大学、2023年11月4日)では、わたしが研究を行う際に、どのようなツール・手法を用いているかを詳論した。とくに、キーワード検索による未知との出会いを、東浩紀氏の概念である「誤配」と結び付けたことに特徴がある。 ②:本研究は漢魏六朝期の人間観の展開をテーマとしているが、人間観を生み出す思想の担い手の中には、処士と呼ばれる存在もいる。「後漢末から六朝における処士――実態としての処士とイメージとしての処士像の同質化について――」(『多元文化』13、2024年2月)は、処士に過剰な役割を担わせてきた従来の見解を再検討し、処士は単純に「官でもなく民でもない人」を指すに過ぎなかったこと、現在の処士像を作り上げたのは、六朝時代を通じた現象であることを指摘した。国際シンポジウム報告「北宋士大夫における正統観」(国際シンポジウム報告「「東アジアの文芸における正統観」 2024年3月7日)は北宋思想家の正統論を個別に検討することで、漢魏六朝史に関する見通しを得ることに成功した。なお、「翻訳文学」・「正統観」シンポジウムは、本研究課題の共催で開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」を選択した理由は二つある。 第一:研究の基盤となる題材にかかるアウトプットを多く行ったため。これは絶対に必要なことであるが、このゆえに少々研究題目それ自体が遅れた。 第二:アウトプット以外の期間は、資料を精読・整理することに時間を多くかけたため。延長した2024年度には、この精読・資料整理を十全に活かしたアウトプットを行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った資料精読・整理を元に、学会報告と論文発表を行う。これまで公表した成果を活かしつつ、改めて漢魏六朝期の人間観の展開全体を見通しながら、『東方学』・『日本中国学会報』などの有力誌に投稿し、これまで使用してきた研究費に見合う成果を提出することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究年度を一年延長したため、次年度使用額が生じた。今年度は、確固たる成果をあげるべく、「中華経典古籍庫」のデータベース使用料及び学会報告のための旅費として研究費を使用する予定である。
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