2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00063
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
ダヴァン ディディエ 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90783291)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 臨済宗 / 大燈国師 / 看話禅 / 下語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大燈派の開祖である宗峰妙超(以下大燈)の時代の資料と後代(室町末期)の資料を検討することによって、実践法である看話禅の新しいアプローチの誕生と進化を明らかになった。 大燈生前の資料は少ないが、『花園院宸記』や虎関師錬の『十禅支録』などに当時の新しい看話禅が実行されていたことと、大燈がそれを使用して参禅の指導をしていたことが判明できた。 大燈派の室町末期の資料の検討によって(一休の『自戒集』、古岳宗亘の『大徳寺夜話』など)、大燈から始まる看話禅が大徳寺に継承されたことが分かった。その詳細が更なる研究を要するが、公案に対するコメントである「下語」(あぎょ)の伝統の存在を確認できて、その意味合いと系統の解明に期待できる。 本研究の範囲を超えるが、大燈の新しい看話禅は室町末期以降に禅の諸流派に広まる際にそれぞれの思想的な特徴に染めると分かる。大燈派から諸流派への伝承の過程のなかに「下語」の伝統は大きな役割を果たしたと判明した。 本研究で大燈そして大燈派の思想的かつ実践的方法の基本的原理の理解に貢献できたと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は調査を中心になっていたが、コロナのために方向を変えて既知の資料の分析に変更した。その結果としては大燈から始まる看話禅の誕生とその進化が見えてきたと言える。しかし、本来の計画通りにではないとはいえ、調査が少しできて新しい資料の発見に繋がった。その翻刻と分析は途中であるが、大燈の下語の伝承の理解に貴重な資料であると思われる。そのため、本研究は順調に進んでいると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
派遣した資料の分析の他に、下語の具体的な意味と使用上の意義について研究を続けたい。 大燈派から始まった看話禅の中心にテキストの独特なコメントと師弟の問答が設けられている。記録されているそれらの問答(所謂「密参録」)に見える下語の分析をすれば、中近世の禅宗(臨済曹洞両宗)の思想的、系統的な進化が見えると思われる。それを今後の目標にしたい。
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Causes of Carryover |
発見した新資料の分析とそれに伴う成果発信をするため。
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