2022 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ・ワイマール期における宗教学形成と宗教運動との相互影響関係に関する研究
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21K00064
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮嶋 俊一 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80645896)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハイラー / ワイマール共和制期 / 宗教現象学 / ドイツ高教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ワイマール共和制期ドイツにおける教会内外の諸宗教運動が宗教学の形成に与えた影響、及び宗教学がそうした宗教運動に与えた影響を明らかにすることを目的とし、特に先行研究がほとんどない、フリードリヒ・ハイラーが深く関わっていたドイツ高教会運動と彼の宗教学を中心に分析することを目指している。本研究は、宗教学の学問史的研究であり、ワイマール共和制期ドイツ宗教運動史研究でもある。 2022年度は、"Hochkirche"、"eine Heilige Kirche"など、ハイラーが深く関わった雑誌に収められた論文等の資料を収集するため、またドイツ高教会運動に関わる人たちへのインタビュー調査を行うため渡独する予定であったが、コロナ禍の影響が残っていたこともあり実現しなかった。そのため、昨年度に引き続いて国内外の図書館に依頼し、必要な論文を収集することを継続的に行った。完全とは言えないものの、必要な資料をさらに集めることができ、現在はそれら収集した資料の整理・分析の作業を続けている。それに加えて、以前、Heiler Archiv (Nachlass)において収集し、まだ分析ができていなかった資料に関しても整理・分析を継続している。 これまでの研究成果は、日本宗教学会をはじめとしたいくつかの国内学会・研究会で発表した。成果として、ハイラーのワイマール共和制期の宗教学的な研究(例えば、学術的主要著書である『祈り』(1918))や大学等アカデミズムにおける学術的な活動の特徴は、戦後のハイラーの研究活動に継承された面があることなどについて確認することができた。とりわけ、ハイラーの(日本を中心とした)東アジア宗教に対する認識の問題点を明らかにし、学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度同様2022年度もハイラーが編集に関わっていた雑誌である"Hochkirche"、"eine Heilige Kirche"所収の論文やハイラーに関する一次資料を収集するため、またHeiler が創設に関わり現在も活動を続けている「ヨハネ兄弟団」( Hochkirchliche St.-Johannes-Bruderschaft )に関し、当時を知る兄弟団員に聞き取り調査を行うために渡独する予定であった。具体的にはドイツMarburg大学の図書館を訪問、Heiler Archiv (Nachlass)などを利用する予定であったが、コロナ禍の影響が残っていたこともあり、やむを得ずそれを中止した。それに代わって国内外の図書館に依頼し、これまで未入手であった論文等を収集することに努めた。まだ不十分ではあるものの、徐々に必要な資料は集まりつつある。現在はそれら収集した資料の整理・分析の作業を続けている。それに加えて、以前、Heiler Archiv (Nachlass)において収集し、まだ分析ができていなかった書簡や新聞記事などの資料に関しても整理・分析を継続している。渡独できなかったことの影響で、一部必要な資料を収集することはできなかったが、それに代わって入手済みの著作を読み進め分析を行い、その成果の一部を日本宗教学会などで公表した。代替的な手段によって計画の遅れをある程度取り戻すことはできているものの、完全とは言えないため「やや遅れている」という判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は、22年度できなかったドイツでの一次資料収集やインタビュー調査を行いたい。マールブルク大学での資料調査等を行い、さらにワイマール共和制期の宗教学・宗教運動に詳しいゲッティンゲン大学所属(Wissenschaftliche Nachwuchskraft)のFritz Heinrich氏から情報収集を行えればと考えている。そしてドイツ高教会運動の実体やHeiler宗教学との関連について諸学会での口頭発表や、学会・学内紀要での論文発表を行う。一次資料については国内外の図書館を通じてさらに収集を進め、何とか遅れを取り戻したい。 研究成果に関しては、日本宗教学会などの国内学会・研究会、さらに国際学会でも発表を行う。紀要や学会研究誌でもその成果を論文として公表した上、最終年度であるためこれまでの研究成果を報告書にまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、予定していた海外出張(ドイツ出張)を取りやめざるを得なかったため。また、コロナ禍の影響が残っており、国内外の学会・研究会のいくつかがオンライン実施となったことで、国内・海外旅費を使用することが想定よりも少なかったため。 23年度は22年度に計画していたドイツ出張(Marburg)を8月に行いたい。また、9月(International Society for the Comparative Study of Civilizations)と7月(East Asian Society for the Scientific Study of Religion)に国際学会での発表も計画している。よって、それらのための海外旅費として使用する。
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