2022 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム諸思想における「グノーシス主義」の比較研究
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21K00067
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊地 達也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40383385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 名誉教授 (70152840)
柳橋 博之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70220192)
井上 貴恵 明治大学, 文学部, 専任講師 (70845255)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イスマーイール派 / ドゥルーズ派 / ヌサイル派 / アラウィー派 / グノーシス主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者である菊地は、2022年度末に刊行された共著に収録された論文において、ヌサイル派(アラウィー派)の資料状況とハスィービー(957年または969年に没)を同派創始者として扱うことの妥当性について検討した上で、まだほとんど研究されたことがないハスィービー著『ラーストバーシュ書簡』に見られるいくつかの特徴的教義について整理した。さらに、学術論文1本において現代ヌサイル派が置かれている状況をドゥルーズ派と比較した上で、『ラーストバーシュ書簡』に見られる輪廻論について分析した。この2本の論文を通じて、ハスィービーの思想においては後代のヌサイル派に顕著なグノーシス主義的な宇宙論の構成要素が現れないことが明らかになったのは成果と言えるだろう。 また、2022年におこなわれた口頭発表においては、ドゥルーズ派聖典『英知の書簡集』に収録された書簡を素材として、11世紀初頭の同派布教活動においては、異教徒向けのものであれイスラム教徒向けのものであれ、グノーシス主義的な宇宙論が後景に退き明示的には示されないことを明らかにした。本年度、菊地はヌサイル派とドゥルーズ派について研究を進め一定の成果を得たが、そのどちらもグノーシス主義的教義と秘教主義の関わりについて示唆を与えるものであったと言えるだろう。 研究分担者もそれぞれの専門領域に関して本研究プロジェクトと関わりのある研究をおこない、柳橋は口頭発表を1度おこない、井上は2本の論文を発表し、3度の口頭発表をおこなった。鎌田についてはパネルでのコメントが学会誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は論文を1本発表する予定だったが、2本発表できたことは予想以上の成果と言える。また、元々口頭発表は予定していなかったが、1度の口頭発表をおこなえたことも想定以上の成果であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ研究は順調に進んでいるので、この調子で進めていきたい。状況が許せば、シーア派内の他の諸思想や神秘主義にまで手を広げたい。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍のため海外や国内への出張ができず、海外で出版された著作の収集も十分にはできなかったため次年度使用額が発生したが、次年度には事態 が好転すると予測されるため、出張や著作の購入に有効活用したい。
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Research Products
(10 results)