2023 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の「宗教」教育をめぐる社会的議論と教育内容についての宗教-社会史的研究
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21K00068
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
塚田 穂高 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40585395)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 宗教教育 / 宗教社会学 / 社会科 / 公民教育 / 教科書 / カルト問題 / 教育論争 / 「宗教2世」問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる令和5年度は、まず前年度に引き続くかたちで「宗教」をめぐる教育制度・枠組の歴史的変遷について、先行研究の収集と文献資料の読み込みを行った。 「教育・教科書の中の宗教」データベース構築のためのデータ整理を、高校「政治・経済」・高校「公共」・高校「地理総合」・高校「歴史総合」・中学校社会科(地理的分野・歴史的分野・公民的分野)に関して中心的に行った。他に、高校「倫理・社会」、高校「倫理」、高校「現代社会」についても教科書収集を進め、「宗教」記述の把握と整理を進めた。高校「政治・経済」「公共」「地理総合」「歴史総合」の全ての教科書における、「宗教」に関わる記述全てのテキストデータを収集・整理・点検した。 「カルト問題」対策教育、「宗教2世」問題と教育、ならびに宗教文化教育の提唱をめぐる議論についての、文献・研究・資料を広く収集するとともに、関連動向について複数の研究者らと情報交換・意見交換を行った。 日本公民教育学会、「宗教と社会」学会、日本宗教学会、日本社会学会、日本社会科教育学会、日本シティズンシップ教育学会、上越教育大学社会科教育学会などにおいて、本科研で収集した資料を活用し、本科研課題に広く関わるテーマでの研究報告を行った。 本科研で収集した資料を活用しながら、「「宗教2世」問題の基礎知識」「宗教 宗教教育の現状を把握し現実的な改善策を提案する」などの論稿を執筆し、発表した。 他に、社会的要請を踏まえながら、「カルト問題」対策教育や「宗教2世」と学校教育のあり方などについて、新聞・専門紙・誌等において、本科研で収集した資料を活用しながら発信・提言を積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の「研究実績の概要」で示した通り、3年目の令和5年度は、資料収集とデータベース整備作業、関係する研究者らとの意見交換、広い意味での「宗教」教育に関わるテーマでの7回の学会報告、論文類の執筆・公表・社会的発信の5点において、おおむね計画に沿って精力的に進めることができたことが言える。 ただし、研究計画にあった「教育・教科書の中の宗教」データベースについては、前年度に続くかたちでデータ部分の整備作業を教科数を増やして著しく進められたことに留まってしまい、サイト構築と試験的運用については、予算配分と所属機関異動前という事情などもあり、構築・運用の実施に至らなかった。 また、きわめて多くの学会において、本科研の課題に密接に関わる、内容の異なる報告をそれぞれ行ったものの、その準備作業に多くの研究時間を費やしたことから、論文類の執筆・公表についても計画通りの数を公表することができなかった。、 以上の理由により、現在までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目の最終年度となる令和6年度は、当初の研究計画を踏まえ、教科書記述のテキストデータの収集・整理に継続して注力するとともに、「教育・教科書の中の宗教」データ ベースの構築・運用を行うことを目指す。 また、国会答弁の中の宗教教育の議論について引き続き追うとともに、宗教・子ども・学校に関わる諸問題や事件、それに関わる議論・言説を広く収集し、整理・記録する。 並行して、これまでの作業と前年度の複数の学会において発表した内容に基づき、複数の論文を執筆し、専門学術誌等への論文投稿を行い、成果を産出する。また新たに、社会科教育系の学会も含む複数の関連学会で研究報告を行う。 加えて、昨今の社会情勢等を踏まえ、広い意味での「宗教」教育の具体的な改善案などについても、研究成果に基づきながら引き続き発信を行っていく。 そして、最終年度として、これまでの成果を報告書などのかたちにまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
研究計画のなかの「教育・教科書の中の宗教」データベースの構築作業を外注するにあたっては、所属機関の異動を予定していたため、サーバーやデータ保持等の観点から、次年度に繰り越す方が適切であると判断した。よって、「次年度使用額」185,965円が生じたものである。令和6年度における研究計画のなかで使用していく。
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