2023 Fiscal Year Research-status Report
日本カトリック教会と日中戦争―教会指導者たちを中心に―
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21K00073
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
三好 千春 南山大学, 人文学部, 教授 (30241912)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日本カトリック教会 / 反共産主義 / 日中戦争 / 回勅『レールム・ノヴァールム』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本カトリック教会が日中戦争を「防共聖戦」として、支持・協力したことの根底にあるものは何かを明らかにすることである。そのために、①1930年代の日本カトリック教会がどのような内容の反共産主義を語っていたか、②1930年代の日本カトリック教会を牽引した教会指導者たちがどのような反共産主義や日中戦争観を述べていたか、を明らかにするとともに、日中戦争を積極的に支持・協力した日本カトリック教会が持っていた内的な論理とカトリック神学との関係を解明しようとしている。 23年度は、①に関する研究として、1920年代までの日本カトリック教会の反共産主義言説の内実―大きな枠組みとして、反共産主義言説の根底には自由主義と平等主義への批判があること、日本の労働者・労働運動に対する低い評価とカトリック神学に基づく労働観や当時の教会が抱いていたあるべき労働者像、あるいは回勅『レールム・ノヴァールム』が述べる労資の義務とが深く関係すること、共産主義が持つ無神論に対する批判のポイントが神を信じない結果、道徳が退廃する点にあること、私的所有権擁護の論理とトマス・アクィナスの「財物の共同」との関係など―を考察した研究を論文化する作業を行った(23年度に刊行されたのは1910年代までに関するもので、1920年代に関しては、24年度に刊行予定。) また、②に関して、ここ数年、イタリアで刊行された満洲国と教皇庁関連の史料集『Santa Sede e Manciukuo(1932-1945)』を読み進めているが、少しずつ、満洲国とヴァチカンとの関係の実態や田口芳五郎神父(当時)の働きが明らかになりつつあり、来年度以降、これらに関して研究発表を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は、22年度に引き続き名古屋教区100年周年記念誌の仕事に時間がとられ、かつ、100年史のための史料分析の途中で、従来全く不明であった、戦前における朝鮮人信徒の司牧をめぐる日本と朝鮮半島のカトリック教会の関係性が明らかになり、それに関連する研究発表を韓国で行うなどしていたため、予定より遅れ気味である。(ただし、この研究により、これまでの日本一国史観的な日本カトリック教会史の枠組みを根本的に問い直す視点を得たことは、科研の課題にとってもプラスであった。) これにより、田口芳五郎神父に関する研究成果を今年度も発表することはできなかったものの、戦前の日本カトリック教会の反共産主義言説に関する研究に関しては、2023年3月に行った研究発表に基づく研究論文の発表を行うことができた。ただ、論文はあまりに長大になり二分割することとなったため、23年度は1910年代までの言説に関する論文を発表し、1920年代については、24年度に刊行されることなった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、1930年代の教会の共産主義関連言説の考察と並んで、田口芳五郎関連の研究を進めていく予定である。 また、同年度中にイタリアに関連史料の収集に出かけることを計画中である。
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Causes of Carryover |
申請者は24年度にイタリアでの史料調査を計画中であるため、それにかかる費用(渡航費、ホテル代など)に使用することを考慮した結果である。
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Research Products
(4 results)