2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Succession of Public Memorials for the Dead: A Case Study of Contemporary Korea
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21K00078
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
田中 悟 摂南大学, 国際学部, 准教授 (90526055)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 現代韓国 / 現代日本 / 死者 / 慰霊 / 追悼 / 継承 / 公的機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦争や内戦、大規模災害などにおいて傷つき、あるいは亡くなった者に対して、後世代の人々はどのように関わることができるか、という点に着目する。とりわけ、死者慰霊の継承という点に注目し、国家その他の公的存在が果たし得る役割とその可能性について、実証と理論の両面で分析と考察を行なうことを目指すものである。なお、具体的な研究項目は、(1) 現代韓国社会における「死者慰霊の継承が問題となっている事例」の実態把握、(2) 近現代日本の事例との比較を含む政治学的・宗教学的考察、(3)「公的な主体による慰霊行為の継承が成立するための条件」の検討と、その成立可能性の考究、という3点である。 上記3項目のうち、(1)については、本年度のフィールドワークおよび資料調査(2022年の夏期および冬期に韓国で実施する予定であった)が、昨年度より続く新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともなう出入国制限によって、再度計画変更を余儀なくされたものの、2022年12月~1月と2023年3月の2度にわたる渡韓を敢行して、現地調査および資料収集を実施した。また併せて、手持ちの既収集資料やウェブ情報を駆使して事例研究についても、引き続き遂行中である。(2)については、国内旅行にも強い制限がかかる中でやはり調査の進行に困難な状況が続いていたが、主に京阪神圏の公営墓地における無縁墓を中心とした現地調査、およびヒアリング調査を進めることができた。こちらについては、今後の成果公表に向けて作業を進めている。(3)については、(1)の成果と関連づけつつ、行政学における中央‐地方関係に関する知見を参照して取り込んだ研究成果を2023年2月に公表した。 以上、研究2年目に当たる本年度は、新型コロナウイルス禍の影響を少なからず受けつつも、韓国および日本の経験をケースとした検証と考察、そして成果の公表を進めることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度については、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外フィールドワークの予定の変更を余儀なくされたものの、年度内に2度にわたる渡韓調査を実現することができた。これらの調査については、状況の推移をにらみつつ、次年度においても引き続き実施していく予定である。 また、出版側の事情で公表が遅れていた論文も、媒体の変更によって本年度内に刊行され、研究成果の一部を反映させた書評論文も公表することができた。 以上の理由から、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と評価するのが妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の対象である現代韓国の「公的な死者をめぐる継承困難な事例」は、現在進行形で形成されているダイナミックな事象であるため、継続的なフィールドワーク、および資料・情報の収集と内容の更新が必須なところである。現在もなお、新型コロナウイルスの影響は予断を許さないが、韓国渡航が可能な状況は継続すると思われるため、国内外での現地調査と資料収集の実施は本年度も引き続き進めていきたいと考えている。 今後は、これまでのフィールドワークや現地調査の成果を踏まえつつ、韓国および日本の事例について入手できた資料・情報を取り込んで研究考察を進めるものとし、その成果を論文として公表することに目途とした活動を遂行するものとする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受けて、国外旅費(フィールドワーク)が予定通りに使用できなかった(日程短縮を余儀なくされた)ことである。また、国内学会・研究会も大半がオンライン化され、国内での調査すら難しい状況が続いたことの影響も受けた。そのような状況の中で、前年度に繰り越した科学研究費の使用を優先したため、本科学研究費の本年度使用については大きな次年度使用額が生じることとなった。 次年度については多くの障害要因が軽減されると思われるため、これまでに実施できなかったフィールドワークや現地調査の可能性を継続的に探りつつ、現状入手済みの調査資料に基づいた成果公表の準備を進めているところであり、もって社会への成果還元の責務を果たす予定である。
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