2021 Fiscal Year Research-status Report
日本列島における死後世界の表象の通時的・総体的把握
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21K00081
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 弘夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (30125570)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 死生観 / 浄土 / 霊場 / 熊野信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島の死後世界の表象に関する資料と文献を可能な限り体系的・網羅的に収集することを目的として、藤崎神社(青森県)、羽黒山(山形県)、熊野・道成寺(和歌山県)、名取・経が峰(宮城県)等で現地調査を実施し、関連する資料の収集を行なった。その作業を通じて、日本列島における死後世界の観念が古代・中世・近世・近代において、それぞれ大きく変容していること、その影響を受けて熊野のような古来の「霊場」とされている場所も、その「聖地」としての実態を時代ごとに劇的に変化させてきたことを解明できた。その結果、聖なる地という観念が、古代から現代まで同じ意味内容をもつものであることを前提とする既存の聖地研究を書き換えるための、重要な手がかりをえることができた。 中世的な霊場形成にあたって、経塚が重要なアイテムとしての意味をもっていることが明らかとなり、弥勒降臨まで経典を保存する装置という従来の概念とは異なる、その新たな存在意義を解明できる見通しをえることができた。中世に霊場が形成される場所は、多くの場合、磐座のある古代以来の聖地であり、そこに経塚が築かれて、この世と彼岸の通路としての中世的な霊場へと変化するという一定のパターンを見出すことができた。 それらの研究成果を、羽黒山、東京大学等で行われたフォーラムにおいて発表した。また、岡山大学で行われている「老年学」プロジェクトが主催するシンポジウムに参加して、本研究課題に関する成果の一部を発表した。 収集した資料と文献を整理し、そのデータベースを作製の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナパンデミックのため、対面で開催する予定だった研究協力者を集めての研究集会を実施できなかった。また、予定していたフィールドでの調査も、その多くを行うことができなかった。国際学会での発表も断念せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本列島の死後世界の表象に関する資料と研究文献を可能な限り系統的・網羅的に把握するために、そのデータベースの作製を推進する。東北(津軽・立石寺)、関東(岩舟地蔵)、関西(熊野)、山陰(出雲)のフィールドにおいて、調査と資料収集を行い、列島の死後世界観の変遷の解明を進めていく。 研究内容を、介護や終末期医療に関する研究会やシンポジウムにおいて積極的に発表し、研究成果の社会への還元を試みるとともに、その結果のフィードバックを通じて問題意識のさらなる先鋭化を図る。そのために、岡山大学で行われている「老年学」プロジェクト、東京大学が主催する「聖地」プロジェクトなどと連携し、共同で研究会を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナパンデミックのため、対面で開催する予定だった研究協力者を集めての研究集会を実施できなかった。また、予定していたフィールドでの調査も、その多くを行うことができなかった。国際学会での発表も断念せざるをえなかった。 実施できなかった研究計画は、2022年度に繰り越して行う予定である。
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[Book] 日本人と神2021
Author(s)
佐藤弘夫
Total Pages
266
Publisher
講談社
ISBN
978-4-06-523404-4