2021 Fiscal Year Research-status Report
古代メソポタミアの宗教的職能者アーシプによる知恵文書形成と継承の思想史的研究
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21K00086
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
細田 あや子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00323949)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アーシプ / 知恵文書 / 知恵の神エンキ/エア / シャーマン |
Outline of Annual Research Achievements |
古代メソポタミアの宗教的職能者アーシプたちの思想形成を研究するために、彼らが書き記した文書の特徴を考察した。『アダパ』物語や『ギルガメシュ叙事詩』では、主人公が異界への修行を通して得た悟りや、生と死を越境することにより備わった技と知恵が重要なテーマとなっている。それは、アーシプとして行動するために獲得してゆく必要なものであり、そのようなテーマの文書は、「アーシプ文学」と名づけることができる。 さらに、これらの文書では、アーシプと知恵の神エンキ/エアとの結びつきが密接であることも明らかとなった。そこから、アーシプたちは、エンキ/エアからの教えや技能をいかに伝えるか、ということに傾注していたことがわかる。「アーシプ文学」とは、最初から誰にでも了解できるものではなく、奥義書、秘義書の側面を有し、読者の気づきの段階が進むとともに自らを開示するような文書であることを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『ギルガメシュ叙事詩』の古バビロニア語版と標準バビロニア語版とを比較し、後者によりアーシプ的要素が認められることを考察した。そのような作品に作り上げた編者スィン・レーキ・ウンニンニの意図も検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
『ギルガメシュ叙事詩』や『アダパ物語』の解読を進め、これらに見いだされる特徴をさらに明らかにする。 さらに、アーシプの儀礼文書と『アーシプの要覧』の記述を対応させながら解読し、アーシプ文書の特質を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大防止のための外出制限により、国内、国外の出張がすべてキャンセルされたため。 2022年度においても感染状況が今後どうなるか不明であるが、旅費や物品費、また謝金などの支出を計画している。
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